2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(25) 風媒花(ふうばいか)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 花粉症がはやり始めたのは、いつごろからであろうか。少なくとも半世紀以上も前の子どものころには、花粉症という言葉だけでなく、花粉症と同じような病状も聞いたことがなかったような気がする。

 それどころか、自然環境が豊かな山間部で育ったこともあり、今では考えられないほど、花粉症の原因とされているスギやヒノキとの濃密な関係の中で毎日を過ごすのが当たり前のことであった。

 その濃密な関係の一つが、竹と太い針金を材料にしたスギ鉄砲の遊びであろう。スギ鉄砲は、空気の圧縮を利用した手作りのオモチャであるが、鉄砲の玉として天然の硬いスギの実を使用していた。

 ところが、スギ花粉の被害が明らかになってくると、そこで初めて、鉄砲の玉として使用していたスギの実が、実際には花であったことに気づかされた。気づかなかったのは、被害がなかったからであろう。

 雌雄同株であるスギの雄花は、花が咲くと花粉を放出する。風によって受粉する風媒花であれば、離れている木に届くように大量の花粉がまかれるのは当然のことであり、仕方のないことである。

 問題は、植えよ増やせと進められてきた林業が、安い外国産の木材に押されて、切り出しても採算が取れなくなったことにある。枝打ちや間伐などの管理がされることなく、放置された結果とも言える。

 植林をした人たちにとっては、子や孫のために少しでも財産を残したいとの願いからであろうが、後になって、そのスギやヒノキが花粉症の元凶として嫌われることになるとは思ってもいなかったに違いない。

 朝日に映し出された山の風景が、なぜかかすんで見えていた。それが霞(かすみ)ではなく花粉の飛散であることは、いたる所で山火事のように白く煙っていることからも明らかであった。

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