2026年10月23日(金)

コラム・エッセイ

(33)イチジク(無花果)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 畑の片隅にイチジクの木を植えたのは、かなり前のことであった。特にイチジクが好きだったわけでも、イチジクに興味があったわけでもないが、店頭に並べられていた苗木に懐かしさを感じて購入した。

 その後、完熟したイチジクの実の写真が添えられていた小さな苗木は、予想外の早さで成長した。そして、ついには茂った大きな葉によって日当たりが悪くなるなど耕作に影響が出るようになってきた。

 さらに、当初見込んでいたイチジクの収穫がほぼゼロであったことが追い打ちをかけた。そして2、3年前には、狭い畑にイチジクを植えたことを反省しながら木を切るという苦渋の選択をした。

 ところが、ひと安心したのも束の間、すさまじいイチジクの木の生命力を見せつけられることになる。それは家の側に植えるものではないと言われていたことの意味を改めて知らされるほどのものであった。

 切り倒した根元付近からは、すぐに以前にも増して多くの新芽が伸び出してきた。イチジクの木を完全に絶やすためには、それなりの措置を講じるか、全ての根を引き抜く必要があったのだろう。

 新しく伸びてきた枝をよく見ると、すでに多くの実がついている。枝先になるほど小さな実ができていることに違和感を覚えた。それは花が咲くことなく実が生るという常識では説明できないことでもあった。

 何とも不思議であるが、その謎は漢字表記である「無花果」に大まかに解き明かされている。直接読むと「無い花の果(か)」であるが、実際には「花が見えない果実」とすべきであろうと思われる。

 その理由は花がないわけではなく、花が果実の内側にあるので見えないことにある。

 果実を食べているつもりが知らないうちに花を食べていることからすれば、「禁断の果実」と言えるかもしれない。

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