コラム・エッセイ
(34)アシナガバチ(脚長蜂)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)かって、蜂(はち)はごく身近な存在であった。自然豊かな山間部で子供時代を過ごしたこともあって、蜂に遭遇することや、刺されて痛い目にあったことなど、今では考えられないほど多くのことを体験した。
種類が多い蜂の中でも、特に身近にいたのが、ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチ、ドロバチなどであろう。それらの中で一番関係が深かったのが、長い後ろ足が特徴のアシナガバチかもしれない。
アシナガバチは家の軒下や植木の枝などに巣をつくることがあり、巣に近づくだけで威嚇や攻撃を繰り返す危険性を持っている。刺されると強い痛みが走り、刺された場所周辺が赤く腫れあがることもある。
最近では、スズメバチだけでなく、アシナガバチに刺された場合にも命にかかわるアナフィラキシーショックがおきる可能性があることが明らかとなっているので、慎重に対応することが必要であろう。
子供のころには、そんな知識もなく、巣の中にいる蜂の子を取るために素手でアシナガバチと対決していた記憶がある。ハスの花のような巣の中にいる蜂の子を、生のままで食べるのが蛮行の理由であった。
蜂の子の食べごろは、はねや足が生えてくる前のものであるが、生えたものはフライパンで炒めると美味(おい)しいらしい。今まで一度も試したことがないだけでなく、これから試してみるだけの覚悟もできていない。
玄関先にいると、一匹の蜂が飛んできた。危険を感じたので身を低くして避けていると、近くのカンナの花にとまるのが見えた。その様子をこっそりのぞいてみると、水滴から水分補給をしているようであった。
肉食のアシナガバチでも、猛暑の中ではのども乾くのであろう。しばらくの間、花にとまっていた。蜂の種類を特定するのは難しいが、おそらく、この蜂はセグロアシナガバチではないかと思われる。
