2025年10月08日(水)

コラム・エッセイ

(39)梅干し

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 梅雨が明けて、夏らしい晴れの日が続くようになると、ようやく梅の天日干しを始めることができる。梅干しにとって最後の仕上げとなる「土用干し」は、良い梅干しを作るための一番大切な作業といえる。

 土用干しとは、夏の土用の時期に、対象となるものを干すことをいう。

 梅の場合には収穫してビンの中で塩づけにされていたものを、再度取り出して、竹ザルの上に並べて時々裏返しながら夏の日差しに当てる。

 暦のうえでの立秋が8月7日となるため、今年の夏の土用はその前の18日間となる。その間に「三日三晩の土用干し」と言われる作業を、急な雨に気を配りながら、夜には家に取り込むなどして繰り返す。

 そうすることによって、梅の水分を抜くことができるため、腐りにくくなり長期の保存が可能となる。古くから行われてきた梅干し作りであるが、そこに秘められた深い知恵には、今更ながら驚くほかはない。

 さらに、梅と一緒にビンに入れられて赤い色付けの役割をしていた赤シソにも殺菌作用があるらしい。その赤シソを梅と一緒にビンから取り出して乾燥させれば、赤シソのふりかけとして食べることができる。

 赤シソのふりかけは、「ゆかり」の商品名で販売されているので、食べ比べてみるのも楽しみの一つかもしれない。年間を通じて品質が安全に管理されている市販品にはかなわないが、手作りの良さは捨てがたい。

 「三日三晩の土用干し」が済んだ梅干しは、そのままで保存する方法と漬けていた梅酢に戻す方法とがある。昔は梅酢に戻す方法が一般的な方法であったような気がするが、それぞれの良さがあるのだろう。

 梅干しが出来上がるまでには、梅の収穫や塩漬け、土用干しなど意外に多くの手間がかかっている。そこには、単に手数と言うだけではなく、季節との密接な結びつきが残されていることを忘れてはならない。

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
東ソー

東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。

サマンサジャパン

来院者の方へもっと目配り、気配りをしたい。物品の補充や搬送に時間を取られる・・・
サマンサジャパンでは医療従事者の方がより医療に専念できるよう、コンシェルジュ、受付、看護助手、清掃、設備など様々な業務を行っています。

周南公立大学

2024年春、周南公立大学は新学部学科を開設しました。経済経営学部(経済経営学科)、人間健康科学部(スポーツ健康科学科・看護学科・福祉学科)、情報科学部(情報科学科)の3学部5学科体制となりました。大学の活動や入試情報も随時公開中!

株式会社トクヤマ

トクヤマは、電子材料・ライフサイエンス・環境事業・化成品・セメントの各分野で、もっと幸せな未来をつくる価値創造型企業です。