コラム・エッセイ
(40)アゲハ蝶
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)家庭菜園で草取りをしていると、1頭(とう)のアゲハ蝶が飛んできた。1頭という数え方は優美な蝶に似つかわしいとはとても思えないが、一般的な1匹や1羽という数え方よりも正しい数え方とされている。
その理由には、いろいろな説があるらしいが、どれも納得できるものではないような気がする。結局のところ、専門家の学術論文でないかぎりは一般的な「匹」や「羽」を使っても問題ないのかもしれない。
ややこしいのは、数え方だけではなく、アゲハ蝶の名前の由来にも表れている。アゲハを漢字で書くと「揚羽」となるが、翅(はね)を揚げた状態なのか、空に揚っている状態を表しているのかが良く分からない。
そのアゲハ蝶の代表的な種類には、ナミアゲハやキアゲハ、クロアゲハなどがいる。いずれの蝶もモンシロチョウなどと比べてみると、大きさだけではなく、鮮やかな色彩や美しい模様の翅を持っている。
その美しさからか、古くは文様(もんよう)として使用されていたことがあり、その主なものが平家の蝶の文様であったと言われている。それが後に、戦国武将たちの家紋として用いられるようになったのであろう。
織田信長の家紋は、「木瓜紋(もっこうもん)」が有名であるが、その他の家紋として「揚羽蝶」を使用している。その理由として、織田信長が自らを平家の末裔であると称していたことがあげられている。
ヒラヒラと舞う蝶を見ると優雅な気持ちになれるのだが、蝶の幼虫は野菜を食い荒らす憎き天敵でもある。無農薬栽培を目指せば仕方のないことであろうが、その被害の大きさに頭を悩まされ続けている。
せめてもの気休めとして、蝶の縁起について調べてみると、そこには深い意味があることが分かった。その一つとして、人の死後に体から抜け出した魂は、蝶の姿になって天に飛んでいくと考えられていた。
