コラム・エッセイ
(41)暑天(しょてん)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)夏の空を表す言葉の一つに暑天がある。いつもの年であれば、その暑天には青い空がどこまでも広がり、入道雲が次々と湧き上がり、何にもさえぎられることもなく真夏の太陽が激しく輝いていたはずである。
ところが今年の夏は、曇りの天気が続くことが異常に多かった。さらに、連日のように熱中症警戒アラートが発表されていたにも関わらず、快晴の空が広がることはなく、太陽が薄雲におおわれる日が続いた。
それでも、薄雲の切れ目から照りつける強い直射日光によって、気温は上昇し真夏日や猛暑日になることもあった。暑いことに変わりはないが、雲におおわれることによって熱がこもり蒸し暑さが増してくる。
そのことは、熱中症警戒アラートの発表にも大きく関係していた。アラートは、直射日光だけによるものと誤解している人も多いらしいが、気温、湿度、輻射熱(ふくしゃねつ)の3つの暑さ指数によるものである。
熱中症で特に気をつけたいのが、高齢者や子どもなどと言われている。熱中症警戒アラートが発表されている時には、不要不急の外出を避けるようにすることやこまめに水分補給をすることなどが必要となる。
さらに、注意しなければならないのは、熱中症の発生場所が道路・交通施設の3割に対して、4割が住宅等居住場所となっていることであろう。家にいるから大丈夫という安心感こそが、一番危険と言える。
しかし、何と言っても夏の風景にふさわしいのは、青い空と入道雲と照りつける太陽の日差しに違いない。そして、思い思いの場所に出かけて、海水浴や山登りや川遊びなどで暑い夏を楽しむことが大切であろう。
トビ(鳶)が舞う暑天を見上げていると、薄雲が途切れて、いきなり青空が顔をのぞかせてきた。久しぶりに見る青空のような気がしたのは、熱中症警戒アラートの発表で外出を控えていたからかもしれない。
