コラム・エッセイ
(45)ひこうき雲
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)久しぶりに、青空が広がった。その透き通るような青空に、心が洗われたかのようなすがすがしさを感じた。最近では、これほど青空が広がったことも、これほど長く続いたことも、無かったような気がする。
それでも、しばらくすると、劇場の幕が下りたかのように、あちらこちらから雲が湧き始めてきた。ゆっくり広がっていく雲を眺めていると、その雲の上を1機の飛行機が白く輝きながら横切っていくのが見えた。
この日は、偶然にも、飛行機のうしろに航跡を描いたような見事な飛行機雲が連なっていたので、その姿をハッキリと確認することができた。おそらく、飛行機の機体だけであれば気づくこともなかったであろう。
飛行機雲と空の雲との違いは良く分からないが、どうやら飛行機雲は飛行機のエンジンから噴出される排気ガスそのものではないらしい。確かに、排気ガスそのものであるならば、いつでも見えているはずである。
飛行機雲に途中で途切れているもの、空の端から端まで長く続いているもの、極端に短いもの、すぐに消えていくもの、いつまでも消えずに残り続けるものなどがあるのも、排気ガスそのものでない証拠であろう。
調べてみると、例外を除き、ほとんどの場合、エンジンから噴出された排気ガスに含まれている水蒸気が、周辺のマイナス40度以下の空気に冷やされて水滴や氷の粒である飛行機雲になっていることが分かった。
この時、飛行機雲のでき方や残り方に大きく関係しているのが、上空の気象条件と言われている。上空の湿度が高ければ飛行機雲が発生しやすくなり、上空が乾燥していれば飛行機雲ができにくいとされている。
最近では、パソコンやスマホで飛んでいる飛行機を追跡できるらしい。
見る機会が少ない飛行機雲を発見できる良さがあるかもしれないが、やはり偶然見上げた空に飛行機雲が描かれていることを静かに待ちたい。
