2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(48)コルチカム

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 コルチカムは、別名をイヌサフランという。どちらかと言えば、コルチカムという名前よりも、イヌサフランの方が馴染みやすいかもしれないが、コルチカムはサフランとはまったく別の種類の植物である。

 それにも関わらず、同じ名前が用いられているのには理由がある。イヌの意味を『古語辞典』(旺文社)で調べてみると、「その物に似ているが劣るものの意。無益な、または役に立たないの意」と書かれていた。

 イヌサフランの場合も、サフランの花に似ているが、サフランの花よりも美しさが劣ると言うことであろうか。それとも、イヌサフランは有毒であるため、サフランのように役に立たないと言うことかもしれない。

 コルチカムの名前の由来については、地中海沿岸の「コクキス」という都市に多く咲いていたからとされている。由来がありながら、劣ると言う意を表すイヌの名前を付けるとは、かなり失礼な話であろう。

 同じようにイヌがついた植物は意外に多くあるが、コルチカムと比べてみるとそれなりに納得できる内容のものであった。たとえば、身近なところではイヌホウズキやイヌビワ、イヌザンショウなどがある。

 イヌホウズキは、空地や道路わきでよく見かける一年草で、ちょうど今ごろ白くて小さい花を咲かせている。その実がホウズキに似ていると言われるが、ボケナスとの別名があるようにナスによく似ている。

 同じように身近にあるイヌビワに至っては、ビワというよりもイチジクと言ったほうがいいほどのいい加減さである。それでも、親しみやすく覚えやすいという利点があるので、許せる範囲と言えるであろう。

 これらのことから、コルチカムをイヌサフランと呼ぶことが決して正しいとは思えない。コルチカムのさわやかな花の色や地面からいきなり咲く独特な姿には、サフランにはないサフラン以上の美しさがある。

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