2025年10月08日(水)

コラム・エッセイ

(50)エビスグサ(夷草)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 先日、豆茶を収穫した。耕作放棄地となっている実家の畑で、自然に生えてきた豆茶を収穫することができた。毎年、他の草と一緒に刈払い機で刈り取っていたが、今年は試しにそのまま残しておくことにした。

 大した理由があったわけではない。どうせ荒れている畑であるのなら豆茶がどうなるかを見届けてみたいという好奇心があったからかも、除草作業の負担を少なくしたいという魂胆があったからかもしれない。

 その後の除草作業でも刈り取りをしないでいると、豆茶は順調に育ち、夏には黄色い花を咲かせるまでになった。そして、いっさいの手入れをしないまま秋になり、気づけば草全体に細長い豆果が実っていた。

 熟した豆果は黒く変色し、触れると中から六角形をした多くの種が弾け飛ぶようになる。すでに黒い実が多く見られるので、大急ぎで収穫した。まだ青い実もかなり含まれていたが、気にしないことにしよう。

 それでも、天日に当てて干せば何とかなるに違いない。しっかり殻が乾いてから、豆茶の実を取り出していく。そこから、いよいよ豆茶づくりの作業が本格的に始まる。味の良し悪しを決める大切な工程でもある。

 豆茶といっても、それがどんなお茶であるかを知らない人も多いに違いない。周南あたりで、普通に飲まれている豆茶の正体はハブ茶であるが、正しくはエビスグサの種を使ったハブ茶というべきであろう。

 エビスグサは、六角形をした種の形から「ロッカクソウ」と呼ばれることもある。さらにその種には、便通改善や目の充血を取る効果があることから漢方薬の「決明子(けつめいし)」として使われている。

 知れば知るほど、エビスグサの優れたところが明らかになってくる。これこそが、過疎地の救世主となる植物に違いないであろう。そこで、収穫した種は、豆茶にしないで来年の種まき用にすることにした。

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
西京銀行

【取扱期間 2025年9月1日~2026年3月31日まで】お預け金額10万円以上。手続き不要!さいきょう定期預金の金利で満期後自動継続。詳細は西京銀行までお気軽にお問い合わせください。

東ソー

東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。

周南公立大学

2024年春、周南公立大学は新学部学科を開設しました。経済経営学部(経済経営学科)、人間健康科学部(スポーツ健康科学科・看護学科・福祉学科)、情報科学部(情報科学科)の3学部5学科体制となりました。大学の活動や入試情報も随時公開中!

株式会社トクヤマ

トクヤマは、電子材料・ライフサイエンス・環境事業・化成品・セメントの各分野で、もっと幸せな未来をつくる価値創造型企業です。