コラム・エッセイ
(53)紅葉風景
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)突然、携帯電話が鳴った。昼寝をしていたこともあり、あわてて電話に出るとSMS(ショートメッセージ)であった。「お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。こちらにてご確認ください」と書かれている。
ちょうど、その時インターネットで注文していたので、あやうくそのメールを信じるところであった。たまたま、家にいたので偽メールであることが分かったが、外出中であれば信用していたかもしれない。
冷静に判断ができる時には、噓であることを容易に見破ることができるに違いないが、今回のように何か一つでも心当たりがあると、いとも簡単に騙されるのであろう。油断大敵であることを思い知らされた。
そんな危険な落とし穴は、電話に限らずパソコンのメールにも溢れかえっている。毎日のように届く迷惑メールには、「有効期限が切れており、更新できません」などのように不安をあおるものが多くある。
たとえば「お客様のお支払い方法が承認されません」、「緊急のご連絡メール」などあげればきりがない。しかも、有名企業や銀行であるかのように偽装されているので、正否を判断することが非常に難しい。
とりあえずメールを安易に開かないことが大切である。そしてメールに書かれたリンクを、絶対にクリックしてはいけないのは当然であり、ましてや、ID番号やパスワードの入力などはもってのほかである。
だます人間が悪いに決まっているが、だまされる側にも責任の一端があると思わなければならないのが情けない。何ともやりきれないが、被害者にならないために、自らにも厳しく言い聞かす必要があるだろう。
おちおち、安心して昼寝もできないほどのわずらわしい世の中から離れて、山間部に向かった。周南市須金にある中国電力中原取水堰(しゅすいぜき)では、今の季節にふさわしい紅葉風景が広がっていた。
