コラム・エッセイ
(63) ロウバイ(蠟梅)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)ガソリンスタンドには、車の長い列ができていた。給油に支障が出るほどの長い行列の目的は、洗車を待つためのものであった。どうやら、多くの車が一度に洗車場に集中した原因は、前日の積雪にあったらしい。
雪が融けた後の車体に残った砂状の汚れは、確かに、にわかに信じがたいほどのものであった。子どものころには、平気で雪を食べていたことがあるほど白い雪に対する印象は、汚れとは無関係であったはずである。
それでも、今回のように雪がとけた後の車の汚れを目の当たりにすると信じないわけにはいかない。さらに、調べてみると大気中の水の分子がチリやホコリなどに付着して結晶化したものが雪であることが分かった。
そして、その日の夜の8時を過ぎたころ、「ドドーン」と家が揺らぐほどの大きな音がした。裏山の崖が崩れたのかと思って、急いで外に出てみると、電灯の光線に浮かび上がったのは大量の雪の固まりであった。
その雪の正体は、前日に降り積もっていた2階の屋根の雪が一気に落ちて来たものと思われる。ちょうど、落ちた場所がビニールトタンの庇(ひさし)の上であったため、驚くほど大きな衝撃音となったのであろう。
その後も、屋根の雪は爆音を響かせながら各方向に落ち続けていた。思いがけない時に聞こえてくる落下音には、慣れていないこともあって驚かされ続けた。めったにない経験で、雪が降らない有難さを痛感した。
ないものねだりのように、普段見ることができない雪の風景に憧れるのは仕方ないことだとしても、たとえ車体が汚れたとしても、屋根から雪が落ちたとしても、その結果はいさぎよく受け入れるべきであろう。
それでも細い枝やロウバイの花を埋めつくすほど降り積もった雪は、美しいの一言に尽きる。大雪の日にだけ見ることができる風景の一つ一つを思い出しながら、再び、雪が降る日が来ることを待ち望んでいる。


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