2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(64)金峰鉱山(みたけこうざん)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 ニッケル基合金。NHKの連続テレビ小説「舞いあがれ!」から、普段あまり耳にすることがない金属名が聞こえてきた。それは、航空機のエンジンに使うネジを作るための材料として取り上げられたものであった。

 話は合金の加工の難しさを克服していくといった内容で進んでいったが、内容とは関係なく琴線(きんせん)に触れるものがあった。おそらく、基合金の主成分であるニッケルに対する強い思いがあったからであろう。

 そのニッケルは、50円硬貨、100円硬貨、水素充電池、家電製品、携帯電話、自動車、住宅など毎日の生活に必要とされるありとあらゆる物に使用されており、一日たりとも欠くことができない重要なものである。

 それほど重要であるにも関わらず、現在の日本では原料となるニッケル鉱石がまったく採掘されていないため、すべてを輸入に頼るという状況が続いている。資源に乏しい国であれば、仕方がないことかもしれない。

 ところが、周南市にあった金峰鉱山は、昭和15年(1940)から20年にかけて日本有数のニッケル鉱山として稼働していたとされている。当時の詳しい記録が残されていないのが残念であるが、もっと誇るべきであろう。

 ニッケル鉱山としての稼働期間が5年という短かさであったことの理由としては、産出したニッケルが貧鉱であったため精錬費用がかかり過ぎたことや終戦となって外国からの輸入が可能となったことがあげられる。

 しかし、たとえ、採掘された鉱石がニッケル含有量の少ない貧鉱であったとしても、当時の資料に「山全体がニッケル鉱の露頭といえるほどの埋蔵鉱量がある」と書かれていることを、けっして忘れてはならない。

 現在確認できる金峰鉱山の採鉱場跡は、3か所ある。そのうちの2か所では崩れ落ちた坑口を確認できるが、他の1か所は残鉱整理が完全に行われており鉱山に続いていたと思われる道が残されるだけとなっている。

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