コラム・エッセイ
(65) 紅梅(こうばい)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)最近、季節の移ろいが肌身で感じられるようになった。19日には、福岡管区気象台から、九州北部地方や山口県で「春一番」が吹いたとの発表があった。「春一番」とは、春先に吹く南寄りの強い風のことである。
その暖かい風の影響で、気温も一気に14度をこえるまで上昇した。前々日には最低気温が0度を下回っていたことからすれば、考えられないほどの気温の変化であるが、この時季としては決して珍しいことではない。
「三寒四温」という言葉があるように、寒い日が3日間続いたあとに暖かい日が4日間続き、また寒い日がくるといったことが繰り返されることによって、季節は行きつ戻りつしながら移り変わっていくのであろう。
今こそが、季節の変わり目を実感できる絶好のチャンスかもしれない。特に立春の日(2月4日)から春分の日(3月21日)までの期間が要注目であろう。ちょうど、19日から二十四節気の「雨水(うすい)」がはじまる。
「雨水」の意味は、雪から雨にかわり、氷がとけて水になることとされている。まだ雪がちらつく日もあるが、雨の日の方がかなり多くなってきた。風のない暖かい日には、川の流れも幾分ぬるんできたように見える。
近くの畑では、すでに満開となった白梅(はくばい)もあるが、そのほとんどがちらほらと咲き始めたものばかりである。しかし、「三寒四温」を繰り返しながら、やがてすべての花が満開となる日も近いであろう。
白色の花をつける白い梅を、「しらうめ」又は「はくばい」という。そのどちらの読みも正しいが、「白滝」を(しらたき)、「白鷺」を(しらさぎ)と読むように、白梅を「しろうめ」と読むのは間違いとされている。
同じように、紅色の花をつける梅のことは、「こうばい」といい「あかうめ」とは言わない。どちらでも良いように思えるが、そこには日本語のこだわりと美しさが、まるで季節の移ろいのように込められている。
