コラム・エッセイ
(67) 夕星(ゆうつづ)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)冬の夜空は美しい。よく晴れた夜には、星々の輝きを手が届くほど近くに見ることができる。その理由は、空気が乾燥しているためと言われているが、それだけではなく、冬の夜空には明るい星が多いことにもある。
最近、特に楽しみにしているのが、日没後の西の空に光り輝いている「宵の明星」と呼ばれる金星である。一番星は、特定の星を指したものではないが、この時季に一番最初に見える金星は一番星と言えるであろう。
その金星の近くで輝いているのが木星であり、日々高度を上げていく金星と高度を下げていく木星の関係が非常に興味深い。2月23日には、西の空に三日月、木星、金星が等間隔で一直線に並んでいたこともあった。
その三日月は、明るく光っている部分以外の暗い面が薄っすらと丸く見えていた。これは、地球に照らされた「地球照(ちきゅうしょう)」というもので、さほど珍しいことではないらしいが不思議の一言に尽きる。
その後、月は次第に離れていったが、3月2日には木星と金星が大接近した。これだけ接近するのは8年ぶりのことであり、次の機会は17年後の2040年になるらしい。接近した後には、星の位置が入れ替わっている。
そして、空が暗闇に包まれるころになると、冬の星座が次々と現われる。有名な星としては、「冬の大三角(だいさんかく)」のシリウス(おおいぬ座)、プロキオン(こいぬ座)、ベテルギウス(オリオン座)であろう。
さらに、「冬のダイヤモンド」が加わる。カペラ(ぎょしゃ座)、アルデバラン(おうし座)、リゲル(オリオン座)、ボルックス(ふたご座)。これらのすべてが、常に夜空を移動するので分かりにくいかも知れない。
2月28日には、「冬のダイヤモンド」の枠中で、月と火星が接近したところが見られた。楕円軌道をしている火星は、地球から遠ざかりつつあるが、6月22日には三日月と古くは夕星と呼ばれていた金星に接近する。
