2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(68) ワームムーン(Worm Moon)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 明け方の西の空には、まだ満月が浮かんでいた。オレンジ色がかった月は、いつもよりも大きく見えているような気がした。月齢を調べてみると、14.8となっていた。さらに、昨夜の21時40分が満月時間となっている。

 この日は、鉱山跡の探索に出かけるため少しばかり早起きをした。行先は、岩国市周東町にある樽山(たるやま)鉱山であるが、この鉱山も他の鉱山と同じように、関係する資料が少なく場所の特定が難しくなっている。

 つい一週間前にも、地元での聞き込みや山中の探索を行ったが徒労に終わっている。特に探さなければならない理由があるわけでも、責任があるわけでもないが、鉱山跡の名前を聞くと、どうしても行ってみたくなる。

 冬枯れの時期は、鉱山跡の探索にとって最適である。登山やトレッキングなどとは違い、ヤブをかき分けて歩くことが多いので当然であろう。さらに、草木が枯れている方がひっそりとたたずむ鉱山を見つけやすい。

 ヘビやハチなどの害虫の被害にあわなくて済むという利点もある。少なくとも、携帯電話が通じない場所でマムシに嚙まれたり、ハチに刺されてアナフィラキシーショックを起こすという最悪の事態を回避できる。

 鉱山を探している時に、同行者の大声が静かな山中に響き渡った。その原因はヘビがいたことであったらしいが、驚くのも無理はない。一週間前には、雪やミゾレが激しく降るほどの冷え込みがあったばかりである。

 暦の上では、3月6日が啓蟄(けいちつ)であることから考えると、いつ出てもおかしくはないはずであるが、例年であればまだ先のことに違いない。驚きの声は、予想より早い出現に対するものであったのだろう。

 3月の満月を、アメリカでは「ワームムーン」と言う。ワームとは、ミミズのような足のない細長い虫のことである。ヘビの出現や奇跡的な鉱山跡の発見も、「ワームムーン」によるものだったのかもしれない。

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