コラム・エッセイ
(70) 徳山ワルツ
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)「みど35周年ありがとう感謝リサイタル」が、3月26日に周南市文化会館大ホールで開かれた。リサイタルがあることを知ったのは、本紙3月10日付の「徳山の歌姫♪感謝リサイタル」の記事を読んだからであった。
酒が苦手だったこともあり、夜の街に出て飲み歩いた経験がほとんどない者にとっては、鑑賞する資格がないとも思っていたが、何度も新聞記事を読み返しているうちに、記憶しておきたいという強い衝動に駆られた。
それは、すなっくみどのママである河野佐代子さんの歩みそのものが、徳山の歴史と重なっているように感じたからである。単なる好奇心かも知れないが、徳山の歴史の生き証人としてその場に臨んでみたいと思った。
その願いがかなった会場では、クラブ歌手として活躍した河野さんの歌声とともにカルチェラタン・エクスプレス・オーケストラの素晴らしい演奏やリリーズ、お客さんとのデュエットなどを楽しく聴くことができた。
「瀬戸の花嫁」や「銀座の恋の物語」など歌われた多くの曲の中で、個人的に一番感動したのが「徳山ワルツ」であった。若い頃によく聴いていた歌を、録音やインターネット動画ではなく生の歌声で聴くのは初めてであった。
今から40年以上前の昭和55年(1980)にコロンビアから発売された「徳山ワルツ」には、回天基地やコンビナート、御幸通りや港までもが登場する。甘く切ないその歌は、徳山の歴史に無くてはならない名曲に違いない。
最後の曲に「愛をありがとう」、アンコールに「さよーなら、さよなら」で始まる「好きになった人」が歌われるなど、河野佐代子さんの歌声だけでなく、司会や照明、リサイタルの構成、演出も「最高」と言えた。
河野さんの「さよちゃん」と呼ばれる人がらとともに、河野さんを支える人達の温かさから徳山の明るい未来を感じることができるリサイタルであった。これからも、周南が徳山を愛する人がいる街であってほしい。
