コラム・エッセイ
周南新百景(17) 周南大橋(周南市浜田)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
移ろいゆく時間の変化をこれほどまで繊細に表現した風景画を、決して描くことができないに違いない。それは平安時代の宮廷画家、巨勢金岡(こせのかなおか)が光市室積のあまりの絶景を目の当たりにして、「我が筆及ばず」と筆を松にかけて去ったとされる「筆懸(かけ)の松」の逸話と同様のことが言えるのではないだろうか。
瀬戸内海の豊かな自然が作りだす色彩と形態の美しさは、場所が問われることもなく、時代にとらわれることもなく幾度となく繰り返されているが、今回に限れば、特に夕暮れ時の急激に変化する様は格別といえる。
あえて行楽地に出かけなくても、通勤途上や散歩中など普段の生活の中でこのような風景を目にすることのできる幸運を大切にしたい。
周南市港町と臨海町などの埋め立て地を結ぶ橋として平成十七年(二〇〇五)に開通した周南大橋は、ニールセン・ローゼ橋と呼ばれるアーチ型の橋である。橋長は千四十五メートルで、県内では角島大橋、関門橋に次ぐ三番目の長さとされている。しかし山口市の椹野川の河口に架かる同じような橋名の周防大橋との差はわずか五メートルに過ぎない。
周南大橋は徳山下松港の物流の機能を強化する目的があるとされながらも、最近では工場夜景の撮影スポットとして大いに注目されている。橋上から眺める夜間の工場風景もまた絶景といえるであろう。ただし、橋上は駐車禁止となっているので、それなりの対応が必要である。
周南大橋に夕暮れが迫っていた。かって富田瓦の取扱でにぎわったといわれる平野港からは、その様子が手に取るように見えた。(画家)
