コラム・エッセイ
周南新百景(16) 温見(ぬくみ)ダム(下松市温見)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
朝から冷たい雨が降った。曇りと伝えられていた天気予報が大きく外れた形となった。そんな雨が降り続く中を、紅葉の見える風景を探して下松市の山間部を訪ねてみた。
山が紅葉の見ごろを迎えるこの時期には、山の様子がよくわかる。紅葉した部分と紅葉していない緑葉の部分の比率や位置関係からは、山の状況だけでなく山の荒廃を読みとることができる。
特に問題と思われるのが杉、ヒノキと竹が生えた範囲である。杉やヒノキは間伐しないまま放置しておくと、山が枯れた状態になり、地滑りなどの災害原因となる。また竹は繁殖力が強く、そのまま手を入れず放置すると雑木林を次々に侵食し、雑木を枯らすことですべてを竹林に変えていく。
山から養分を奪うだけの杉、ヒノキや竹に比べて、役に立たないとして見捨てられていた雑木林は、落ち葉によって養分を山に与え、腐葉土の積もった地面が保水効果を産み、さらに深く張った根が地滑りを防いでくれる。
極端な言い方をすれば、本当の意味での豊かな山とは、植林が多くされた山ではなく、このような雑木林が多く残された山ではないかとさえ思うことができる。
昭和十五年(一九四〇)に着工され、長い中断の後、昭和三十年(一九五五)に完成した温見ダムの周辺では、本当の意味での豊かな山の紅葉が広がっていた。
結局、雨は夕方になっても止む気配もなく降り続いていた。天気予報によって計画をたてるのは自己責任であるが、時には、こうして雨に濡れた深い色の紅葉に出合う幸運も待ち受けている。(画家)
