コラム・エッセイ
蛍石
ちょこっと豆知識 立入塾しゃくなげの花が見事だと聞いて、佐波川沿いにある八幡宮を知人と訪ねたのはゴールデンウィーク明けのことでした。お目当ての花はピークを過ぎていましたが、雨上がりの冷気を帯びた境内の空気は、身も心もより一層引き締められる感じで、散策はとても気持ちの良いものでした。本殿へのお参りを済ませ、脇にある珍しいおみくじを引きました。パワーストーンのお守りが入っているというものです。その小袋の中から出てきた小さな石は茶色掛かった半透明のもので蛍石とありました。その後の散策は私の一人語りとなってしまいました。
「蛍石はフルオライトと言ってフッ化カルシウムの結晶。フルオはフッ素のことで、へき開と言う決まった方向に割れやすい性質があり、鉱物としてはそれほど硬い方ではない。見た目がきれいだから宝石としても使われるけど、その透明性から光学用に使われたり、フッ化水素の原料など工業用に使われることが多い。鉱物には少し詳しいよ。授業を真面目に聞いていたからね。でも、蛍石は特別かもしれない」
少し間をおいて私は話を続けました。「小学2年だったか3年だったかは忘れてしまったけど、同じクラスにいた女の子が、クラスのと言うよりは学年のアイドル的存在で、大げさな話、同じ学年の男子は全員彼女のことが好きだとさえ噂されていた。ある時友人から、その子からもらったという蛍石を見せられてね。なんでも彼女のおばあちゃんの家近くの海岸で拾えるようで、頼めばもらえるよって。それで翌日には自分も彼女に石が欲しいと頼んでた。でも、興味があったのはあくまで石だけだから。もらった薄紫の石は、机の右上の引き出しの一番奥に大切にしまって時々眺めてた。今はもうなくしてしまったよ」
「それだけ?」横を歩いていた知人がようやく口を開きました。「それだけ。でも、高校の時の友人たちと飲みに行くと、その中の一人が酒がまわって来ると必ず、お前はみどりちゃんと幼馴染みだから、次の飲み会には絶対連れてこい。俺は今でもみどりちゃんのこと大好きなんだから。と、絡んでくるんだよ。きれいな石もらっただけなのにね」
(立入塾 山口県周南市開作北819-7 TEL.0834-25-4553)
