コラム・エッセイ
角で会いましょう
ちょこっと豆知識 立入塾「一つの壁が隣の壁になんて言ったか?」これはサリンジャーの短編小説「エズミに捧ぐ」の中で、主人公である曹長が、戦場へ赴く直前の休暇中にふと立ち寄った喫茶店で出会った少女エズミの5歳の弟から突然出されたなぞなぞです。主人公が困っていると男の子は嬉しそうに「角で会いましょうだよ。」と答えを教えます。サリンジャーの小説の中でも特に好きなシーンです。
少し前になるのですが、徳山計量器の山本さんから「今度うちの妹がテレビに出るらしいんです。メインはダンナの方なんですが、これで妹夫婦の生活の謎が少しだけ分かりそうです。」と言う話を伺い、数日後に放送された番組を私も興味深く拝見しました。番組は北極探検家山崎哲秀氏の活動を紹介するものでした。そして山崎氏の妻有佐さんが山本さんの妹です。
番組でも取り上げられていましたが、元南極観測隊員の有佐さんと山崎氏の出会いを山本さんも笑いながら話されていました。「北極の人間が南極の人間と出会うのだから、本当に奇妙な事。ダンナが観測隊員として南極にやって来て、そこで出会ったらしい。」私はそのエピソードを聞いた時、サリンジャーのなぞなぞを思い出しました。小さな部屋の隅っこだろうが地球の端と端だろが、気持ちがあれば距離など関係なく出会えるのだと。
さて、エズミの話は出会いから一年後の曹長が入院している病室へと飛びます。壮絶な戦場で負傷し更に精神的にも病んでしまった主人公、やっとのことでベットの側に一年近く置き去りにされていたエズミから送られた小包を手にします。ずっと封が切られていなかった小包の中には腕時計と手紙が入っていました。エズミからの手紙を読んでいる最中、主人公は心地の良い眠りに落ちます。「エズミ、本当の眠気を覚える人間は、元のような無傷のままの人間に戻れる可能性を必ず持っている。」と言う曹長の言葉で話は閉じられます。
困難な問題に直面しても希望を持ち続ける事。これがすべての解決につながるものと信じます。たとえそれが片思いであっても。
(立入塾 周南市開作北819-7 TEL.0834-25-4553)
