コラム・エッセイ
パンドラの箱
ちょこっと豆知識 立入塾最終の授業を終えて一休みしているとH君から連絡が。「明日の昼都合がよければ、徳山のラーメン行きませんか?」との事。すぐに待ち合わせの場所と時間だけの返信をしました。
H君との付き合いはかれこれ20年近くになります。一回り以上若いH君との出会いは共通の趣味がきっかけでした。しかし時間の経過と共に二人の趣味は少しずつ離れて行き、今ではすっかり共通点がなくなってしまいました。それでも都合がつけば会ってお互いの近況などを報告し合っています。
約束の場所で落ち合い、寒さを拒むように二人とも無口な速足で目的の店の前まで急ぎました。「ラーメン、久しぶりだね。しかもこの店とは。」以前はラーメン好きなH君から新しい店が出来ると直ぐに食べに行きましょうと連絡が来ていたのですが、ラーメンの誘いは久しぶりでした。お昼にはまだ早い時間ですが、躊躇することなく店に入りました。「この味覚えているよ。懐かしい味だね。でも、食べるのは学生時代に帰省した時以来だ。」
しばし昔のラーメン店談義から駅前にあった色々な店の思い出話で盛り上がりました。年の差こそあれ、当時の賑わいを知る者同士、昔話は尽きません。昼時も近くなり店に客が増え始めた頃、「もうそろそろ。」と我々は席を立ちました。店を出ながらH君は「この後銀行寄るので。今日はこの辺で。」「解約?あそこの支店今月いっぱいだってね。」「そうです。学生時代作った口座ですが、最近はほとんど使ってなかったので。」私を誘った理由はこのことだったのかと気づきました。
一人になった私は駐車場までわざわざ遠回りをしてみることにしました。平日の昼時なのか寒さのせいなのか、行き交う人はまばらで、マンションを建設している工事関係の作業員ばかり目につきます。昔宝箱のように感じていた百貨店の跡地です。不意に子供の頃この街並に憧れていた気持ちが甦って来ました。ちょうどパンドラの箱の底に「希望」が残っていたように。
協力:立入塾 周南市開作北819-7 TEL.0834-25-4553
