コラム・エッセイ
もの思わせる春の雨
随想 猫の目 吉原 雍《春雨(はるさめ)》
昨夜から雨が静かに降っている。木や花、万物を、優しくはぐくむ春雨…とくれば思い出すのがあの芝居。
祇園の芸妓・雛菊が、恋人の月形半平太に優しく傘をさしかける。
「月さま、雨が」
「春雨じゃ、濡れてゆこう」
春雨には、少しくらい濡れてもいいやと思わせる風情があるんだ。
さて、この月さまのモデルは土佐藩の尊王攘夷の志士・武市半平太だが、親幕府派の藩主・山内容堂に嫌われ、36歳で切腹して果てた。
薩摩、長州に比べて、土佐藩の明治維新の活躍ぶりが見劣りするのは、早くに武市を失ったためと言われたほどの人物だった。
明治維新のころ、長州藩でも徳山藩でも藩内に正義派(倒幕)と俗論派(佐幕)の勢力争いがあって、多くの有能な武士が命を落としたものだった。
あのころも いまも そぼ降る 春の雨
《桂小五郎》
余談だが、長州人としてはあの芝居の主役は、西郷隆盛と薩長同盟を結んだ桂小五郎(後の木戸孝允)にしてもらいたかったね。(笑)
桂と芸妓・幾松(後の正妻・木戸松子)のロマンス、桂の付け人をしていた伊藤博文が、後に語った話をご紹介しよう。
「桂さんは、祇園一の美妓・幾松さんに一目ぼれし一緒になろうとしたが、邪魔がおってうまく行かん。
そこで見かねたワシが乗り出し、最後には刀にかけて、邪魔者に手を引かせたんじゃ」
維新後に桂が、若い不遇時代を支えた幾松を正妻に迎えた話は有名。
また明治10年、桂が44歳で病死した後、松子は髪を下ろし、生涯、霊を守った。
その明治10年は、西郷が西南の役で敗れる年でもあったが、桂の最期の言葉は「西郷、もうこの辺で、ええじゃろう」だったという。
(お互いに、もうええじゃろう。明治の新時代も、不備はあるが、まあ一息ついた。思えば西郷も、わしも、ようやった…)
《危うし、ソメイヨシノ》
話変わって、サクラサクのいま、とんでもないニュースが流れている。
「日本のサクラの70%を占めるソメイヨシノの寿命が5、60年しかない」と。
ということは、戦後まもなく植えた桜の大半が、遠からず枯れてしまうということ。
徳山の桜馬場も桜並木も、計画的に早く、若木を補充しないと絶滅してしまうよ!!
《花粉症のスギ》
そこで気になるのがスギの寿命だが、桜と同じく5、60年らしい。
ただしこちらは5、60年のタクトで伐採、使用、植樹と好循環しているとかで、不滅!!(笑)
(ギャラリー三匹の猫)
