2026年04月17日(金)

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子と親のための特別養子縁組 産婦人科医として取り組み

  • 田中病院院長 田中泰雅さん(47)

 望まない妊娠、育てられない出産で生まれた子と母親を救う「特別養子縁組」。周南市三番町の田中病院はあんしん母と子の産婦人科連絡協議会に参加している全国6カ所、県内では唯一の特別養子縁組取り扱い医療施設の一つ。養子を迎えるまでの養親のトレーニングや、成長してからのルーツ探しにも備えるなど活動は養子と養親を結ぶだけにとどまらない。なんとしても命を救いたいという同病院の田中泰雅院長にその思いの一端をうかがった。

(延安弘行)

 ――先日、周南市でも母親が生まれたばかりのわが子を殺害するという事件がありました。この活動を始めたのはどういう思いからですか。

 田中 医療機関にアプローチしてくれればなんとかできる、中高校生やDⅤで逃げている人、以前にコインロッカーベビーという言葉がありましたが、もしわが子を殺せばその親は殺人者になり、家族、親兄弟も苦しむことになる。なんとかしなければという思いで5年前から始めました。

 ――5年間の実績を教えて下さい。

 田中 5年間で9件の養子縁組が成立しました。現在2件が進行中です。全国の医療機関などから連絡が入ります。あらかじめ申し込みがあった養親に紹介します。いきなり養親にはなれませんから乳児院でおむつボランティアやお話ボランティア、抱っこボランティアをするなどトレーニングをします。

 ――妊娠期間という準備の時間の代わりというわけですね。

 田中 トレーニングの間に「お父さんスイッチ」「お母さんスイッチ」が入ってきます。抱っこが苦にならない人もいますが、自分には無理だとわかる人もいます。それはそれでいいと思います。

 ――子どもにとっての家庭の大切さはどこにあるのでしょか。

 田中 親は自分だけ育ててくれます。親はどんなことがあっても自分の味方です。「親はあなたのためにいるんだよ」ということを感じてほしい。

 ――5年前に始めた時から現在のプログラムがあったんでしょうか。

 田中 充実や拡充を重ねてきました。以前は養子縁組に光があたっていませんでしたが、いろんな取り組みにより養親の希望者も来られるようになりました。

 ――戸籍を見ただけでは養子だとわからないことが特別養子縁組の特徴ということですが。

 田中 ぱっと見てもわかりません。一方で子どもがどうして養子になったのか、いきさつが知れるようにしたい。お母さんは自分のために泣いてくれたのか、どんな家族がいたのか、子どもへのメッセージを残したい。これは戸籍とは別の問題です。

 ――子どもが愛されて生まれてきたとわかるようにする活動も必要というわけですね。

 田中 これも田中病院で取り組んでいます。子どものことを嫌いという親はいません。子どもが愛されたということを伝えるとともに養親、母親も支援していきたい。

 ――これから取り組みたいことを教えて下さい。

 田中 児童虐待では通報がありますが、妊婦についても通報があっもいいと思っています。妊婦本人が言えない場合もあります。誰にも知られず妊娠している人がいた場合、友達や周囲の人が知らせてほしい。うすうす妊娠に気づいていても恐くて本人に聞けない時、周囲の人が私たち(田中病院)に連絡や相談してくれることでその人が助けられます。周りのお手伝いが必要です。

 ――養子縁組に至った9件の背後には、その何倍もの自分で育てるようになった親子がいるということですか。

 田中 その通りです。これからは養子が珍しい扱いがされないよう広まるようにしていきたいですね。

 ――子とその親のためにいろんな選択肢があること、その中に特別養子縁組があることの理解が広がってほしいですね。今日はどうもありがとうございました。

 田中病院は1948年から徳山の地で田中院長の祖父から3代にわたり、産婦人科としてお産を扱ってきた。人工妊娠中絶はしていない。一般社団法人あんしん母と子の産婦人科連絡協議会理事、全国養子縁組団体連絡協議会正会員。診療科目に特別養子縁組支援外来を掲げ、実母、養親、いずれからも謝礼や寄付金などを取らず、医療の一環として取り組んでいる。

 5年前のスタート当時に県議会議員だった藤井律子周南市長が行政との折衝などで支援し、自身のホームページでも同病院の活動を紹介している。

 同病院の電話は0834-32-2000。 

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