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【周南3市】マイナ保険証、利用呼び掛けるが… 大規模病院でも1日10数人
地域その他現行の健康保険証は、2日から新たに発行されなくなった。マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)への移行を進めるためだが、実際に医療機関でマイナ保険証を使う人は多くはない。マイナンバーカードの普及を目指す政府だがトラブルの報告も多く、現状は思惑通りに進んでいないのが現状だ。
登録しても使わない!
周南3市のマイナンバーカードの保有率は、10月末で、下松市が最も高く市民の80・6%、周南市が80.5%、光市が79.6%。全国では75.7%になっている。その8割がマイナ保険証として利用できる登録をしている。国民の半数以上がマイナ保険証を持っていることになる。
しかし、使われていない。毎日300人が訪れる光市の光総合病院では、月に1回は保険証の確認が必要。しかしマイナ保険証で確認する人は全体の12.3%で、1日当たりでは10数人にとどまっている。
カードリーダーで読み取り、暗証番号か顔認証による本人確認が必要なマイナ保険証。カードリーダーの周囲には「マイナンバーカードで受付してください」というポスターも張られているが、利用者はなかなか増えない。
マイナ保険証のメリットとして、患者の同意があれば電子カルテと連携した過去の医療情報の提供を受けることができるが、活用されていないという。
保険証だと家族が持ってくることや、コピーでも確認できるが、マイナ保険証は本人確認が必須で本人が持参しなければならない。
従来型保険証は発行が停止され、遅くとも1年後には使用できなくなるが、マイナ保険証がなくても12月2日以降に送られてくる「資格確認書」を提示すれば、今まで通りの負担で治療を受けることができる。このままでは従来型保険証が「資格確認書」に代わるだけかもしれないと見られている。
4分の3の医療機関でトラブル
なぜ、こんなことになっているのか。医師、歯科医師で構成する任意団体の山口県保険医協会は保険証を残すことを求めているが、8月から9月にかけて「健康保険証の廃止に伴う実態調査」を実施した。
マイナ保険証をめぐるトラブル調査では、回答があった医科診療所181件、歯科診療所46件、病院19件のうち、5月以降にトラブルが「あった」という回答が75.1%で、「なかった」は24.9%。
トラブルの内容は、「顔認証でエラー」など本人確認ができない場合や、カードリーダーの不具合、記載されているデータの誤りもあった。「マイナ保険証の期限切れ」も2割あった。電子証明書の期限は5年であり、「資格なし」のケースがこれから増えると同協会では指摘する。マイナ保険証が利用できない場合は従来型保険証を提示する必要が生じ、トラブルに備えるとすればマイナ保険証と一緒に持参する必要がありそうだ。
高齢者施設は保険証廃止に反対多数
同協会は高齢者施設への保険証廃止のアンケート調査の結果も公表している。高齢者施設117件のうち、健康保険証の廃止に反対が76.9%、どちらでもないが19.7%、無回答2.6%で、賛成は0.9%だった。
施設の多くは利用者・入所者の健康保険証を管理していて、マイナ保険証になった場合、その取得の援助や管理についても対応せざるを得ないが、「対応できない」とする施設が8割を占める。紛失時の責任や暗証番号の取り扱い、情報漏洩への懸念があるためだ。
多くの医療機関では、マイナ保険証の利用促進に協力して患者への声掛けに取り組んでいるが、利用への不安が払拭され、使い勝手もよくなり、厚生労働省など主張する「より良い医療が受けられる」というメリットを享受できるまでには時間がかかりそうだ。
(延安弘行)