コラム「一言進言」
何の選挙か知らない若者
〜政治に興味を持たせるには新聞を〜
■ 久しぶりに街中に選挙カーが走っている。周南市では県議会議員選挙は2人が落選する厳しい選挙だ。候補者の声からも必死度が伝わってくる。しかし、市民の反応は薄い。特に若者層には必死さが伝わっていない。それは選挙運動を担う人たちの顔ぶれを見てきたから良くわかる。過去は大勢の若者たちも運動員として参加している姿が目に入っていた。しかし最近の選挙は中年層から上の世代が中心になっている。
■ もう5年ぐらい前だが20歳の若者にアンケートを取ったことがある。100人ほどだったが、周南市では市長の名前を知っている若者は2割程度しかいなかった。がっかりとやっぱりの感覚が重なったのを覚えている。市長でさえそうなのだから、県議会議員の名前はいかほどの若者が知っているだろうか。
■ 18歳に選挙権が与えられるようになったが、若者層の投票率は悲惨だ。20パーセント台も多い。これほど政治に無関心な若者が増えるのは、私たちの年代では理解できない。一体何が起こっているのか。本気で行政も政治家たちも考えないと地方がだめになり、国家も民主主義も機能しなくなる。
■ 先ずは若者たちに地域のこと、政治のことに関心を持たせることだが、至難の業だ。学校現場も政治のことを語るのはタブー視されてきて、語れる教師もいなくなった。教員自体が地域のことや、政治のことに興味を持っていないのだから致し方ない。まずは新聞を読まなくなったのも大きい。情報はSNSで充分と思っているのではないか。
■ 今春から文科省は小中学校で新聞を読むことを奨励することにした。中学校は5部、小学校は3部まで購読する費用を負担する。しかし、高校はそれがない。学校長も新聞に興味を持たない人が増えた。全国的に新聞購読者は激減した。並行して選挙の投票率も急降下してきた。若者の新聞離れは特に顕著だ。国もさすがに危機感を持ってきた。
■ 大手新聞も部数減の中、地方の記者を大幅に減らし、ここ周南地域でも周南地域のことを報じる大手紙の記事は激減した。市議会議員の動き、県議会議員の動きなどは大手紙でほとんど知る由もない。ある高校生に聞いた。「今、何の選挙か知っている?」と3人組に聞いたが、「わかりません」と口をそろえた。
■ 昔徳山市の「明るい選挙推進委員」を務めたことがある。広報費の少なさに驚いたのを覚えている。選挙管理委員会の重要な仕事の一つは投票率を上げることだ。このままでは国の根幹の民主主義を守ることも危ない。投票に行こう。
(中島 進)