2026年07月09日(木)

コラム「一言進言」

執拗な市議が71人の命を救った

~諦めた下松市議たちに物申す~

東日本大震災の9日前に亡くなった市議会議員がいた。岩手県大船渡市の市議だった平田武さんだ。平田さんは海に近い小学校のすぐそばに迫る山に橋を架けて、津波が来た時の避難通路を作るべきだと訴えていた。「津波が来て1階に降りて避難していたら間に合わない。2階から直接道に出た方がいい」と執拗に訴えた。震災前の年、市は平田市議の強い要望を受けて、400万円で橋を架けた。

2011年3月11日、その小学校は津波に襲われ、がれきと化した。しかし71人の小学生はその避難橋を渡り、わずかな時間差で無事に山の上に逃げることができた。市内では生前の平田市議の強い要望を聞いたことを感謝する声が広がった。逃げて助かった小学生の中に平田市議の孫もいた。

1人の市議の要求を、議会も執行部も渋々だったかも知れないが聞き入れて作った避難橋だったが、多くの子どもの命を救った。この話は、いまだに私の記憶の中で確固たる確信として残っている。市議として信念をもって訴え続けることの大切さを教えてくれた。

今回の3市の市議会で注目していたのが下松市議会に出された「中学生の医療費無料化」の請願の扱いだった。「願意は妥当だが実現性に確信が持てない」との理由で趣旨採択として議決した。4人が反対、15人が賛成した。要するに行政がやる気がないことを忖度しての議決だった。今の時代に本当に必要とは思えないとの宣言になった。

学童を抱える低所得層だけでなく、医療費は不意の出費で、病院に連れて行くにも気持ち的に躊躇することはしばしばある。しかも医療費は勝手に値上げをしてきた。子育て所帯の不安は増すばかりだ。中学生になると制服だけでなく、部活をさせるにもユニフォーム代など出費もかさむ。せめて具合が悪くなった時は躊躇することなく病院に連れて行けるようにすることは行政の責務だ。

全国的にも中学生の医療費無料化を実施している自治体はかなり増えてきた。市議が「実現が難しい」と判断するのは、議員活動の放棄につながるような現象だ。先述の平田市議のように執拗に要求した市議が71人の子どもの命を救ったのだ。市民に代わって市民の願いを要求するのが市議の仕事だと思うが、どうだろうか。  

(中島 

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