2024年12月02日(月)

コラム「一言進言」

中学部活の地域移行に反対する

~義務教育下、責任部署不在で大丈夫か?~

戦後70年以上見慣れた光景だった中学校での部活動が姿を消そうとしている。教師の働き方改革の中から出た発想だが、文科省の決定はあまりにも稚拙で、教育的な見方をどこまで考えたのか、国会での議論は尽くせたのか、地域による事情の違いを考えたのか、大人たちの都合だけで学校現場は大混乱になりそうだ。全国の自治体が黙ってこんな方針に粛々と従っているのも気持ちが悪い。

戦後、教育の世界は政治と切り離されてきた。国も、地方自治体も教育委員会や学校に口を出してはいけないことで定着してきた。だから学校のいじめ問題が出ても市長などが口をはさむことはできなかった。今まで中学生の部活は学校教育の一部だと誰しも思っていた。

それが2年後には部活が学校現場から一斉に姿を消し、学習塾や、ピアノ教室、スポーツクラブに通う中学生と同等の扱いになる。学校単位の吹奏楽コンクールもなくなり、中体連の存在もなくなるかもしれない。しかも一番問題なのは、今まで部活の問題は教育委員会が主管していたが、わが社の記事にあったように、周南市教委の学校教育課は「今後は市の文化振興財団、市スポーツ協会に任せている」と民間任せを宣言している。一体どこが担当窓口になるかもわからない。問題が生じてもすべて個人の力で解決するしかない。

義務教育下の中学生を預かり、教育の一環として人としてたくましく、思いやりのある子どもにするための指導はどうすればと悩む指導者も多く出てくるだろう。扱いが難しい子どもは排除したくなるが民間ならできる。教師は教壇から教えるだけで良くなる。ならば教え方の上手な教師がオンラインで一斉に講義すれば済む。

放課後、一斉に下校して、校庭に白球を追う子どもの姿もなく、音楽教室から合唱を練習する歌声一つ聞こえない中学校を想像したくもないが、文科省が望む中学校はあまりにも無機質だ。学校教育課は教えたい先生がいれば「クラブチームに入って教えれば良い」と言い放つ。

わが社も過去様々な熱血教師を取材してきたが、陸上競技が得意な某教師は赴任した中学校をすべからく全国大会に連れて行っていた。ハンドボールが好きな教師は全校生徒数がチームづくりにぎりぎりでも、全国大会への出場を成し遂げていた。部活は子どもたちに感動や思い出を提供してくれた。文科省の大人たちには中学校時代、部活に良い思い出を抱いた人がいなかったのだろうか。ことなかれ主義の大人たちに、子どもたちの青春は無機質にされる。

(中島 

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