2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

№81 かたじけない ほとぼりがさめる 後朝(きぬぎぬ) 馬脚をあらわす 下駄をあずける 日本語はロマンである

独善・独言

 ㊀演目は忘れたが小朝の落語に討入前の大石主悦が身分を商人と偽って吉原で遊んだという噺がある。花魁が「おひとつどうぞ」と酌をすると「かたじけない」と答える。「あらお武家様だったの」と突っ込まれると主悦は「膳の上が散らかったのでカタジケナイトイケナイ」とあわてて返したというもの。この“かたじけない”をはじめ㋑のとおりネットで語源をみても“ウノミ”にできない言葉がある。情報伝達手段に乏しい時代に、これらの言語は誰が言いだしどんな経路で共用語にまで広がったのか納得できないでいる。

 ㊁一度しか会ったことのないK氏から「お約束のものです」と添書きのある俳句集が送られてきた。お約束…10年以上前の話しである。忘れていた。㋺はその俳句集のなかで読めなかったり意味も不確かだったりした「季語」である。不明を恥じた。
 なかの一句だけ紹介したい。『プラットホーム 夕立の後の たんぼ風』…ベンチに座って汽車を待つ寅さんの姿が浮かんでこないか。

 ㊂その季語のひとつ『冬隣』という吉田旺作詞、ちあきなおみ歌がある。夫を亡くした妻が『写真のあなたは若いまま きれいな笑顔がにくらしい あれからわたしは冬隣 微笑むことさえ忘れそう』と語りかける。冬隣とは、寒い冬がすぐそこまで来ていることを表す季語だそうだ。
 私はこの歌を「北海まさるショー」で聞いた。震えて…持ち歌にした。

 ㊃㋩は下関市愛グループ創師神田忠刊氏発刊の社員教育書のなかの難解漢字⇒パソコン検出不能の漢字である。あなたはいくつ読めるだろうか。神田会長は社員啓蒙のために敢えてこのような難字をあふれさせているように受け止めた。これらはなぜ廃れたのか、我々は忘れ去ってよいのか…それより、辞書を片手に会長の訓示を理解しようと苦闘する社員の姿を思い浮かべるとおかしくなる。

 ㊄野球関連の日本語訳は正岡子規ともう一人が関わったと聞く。打者とあって“投者”でないのは、ベースボールは“塁球”にしなかったのは、遊撃手とは何のこと、死球はヒドイ、“当球”で良かったのでは…様々“茶々”を入れたくなる。なお、日本のプロ野球で死球で死亡した選手は一人もいないそうである。

 以前はそういえば蹴球、排球、拳闘などと言っていた。バスケットボールの篭球は“ロウキュウ”と読むらしい。

 ㊅㋥は福沢諭吉が和訳したり広めたりしたことばである。上記のスポーツ用語と違って今も納得させる重みのあるものばかりであるが、文明開化以前は、たとえば“経済”とか“社会”いう今の概念はどう表現されていたのか興味が湧く。

 背広はロンドンの紳士服街“サヴィル・ロウ”からきたという話を最近になって聞いた。しゃれている…誰が最初に言いだしたのだろうか。

 ㊆㋭以下はは28稿でも触れた語源にこだわらず現在も通用している語句である。戦後の生活様式の変革で家畜や和装などは駆逐されたが、それに由来する語句は死語にもならずにどっこい生き残ったのである

 それでも死にそうな言葉もある。最近“犬馬の労をとる”とか“三尺さがって師の影を踏まず”を口にしたことがあるか。さらに、もう少したてば“一服する”とか“一筆啓上”とかの言葉も忘れ去られるであろう。

 ともかく学者ほどの知識はなくとも日本語のロマンにこだわって楽しんでいるのは私だけであろうか。

…どうでしょうか。

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