コラム・エッセイ
No.83 地方自治考14・人口問題、財務問題①…地方の人口は何をやっても増加しないと覚悟すべき
独善・独言これまで地方自治に関して13稿にわたり触れてきた。基調は破綻都市夕張や破綻寸前の北見市に学んで従来の常識を打ち破った革命的なプラン作成を行政に期対するもの(本紙「進言」引用)。
長期的視点でみると国と地方の最大の政治課題は人口問題とそれにリンクする財政問題と考える。この2点の課題克服のための私見を何稿かにわたり述べたい。なお、次稿以下も含めて25年は2025年と読み代えていただきたい。
㊀そこでまず「人口は今後減少する覚悟」を確認したい。
①22日、政府は次の10年間に向かって新たな創生策の骨子案を発表した。それには、⑴若者や女性に選ばれる魅力的な職場を地方につくりだす、東京圏の一極集中のリスク対応のため、⑵企業の本社機能の地方移転を促進、⑶地方大学の魅力向上に引続き取組むとともに、⑷地方で高齢者や障害者が共同で生活できる施設を全国に設置する、⑸週末などを地方で過ごす「関係人口」の拡大に取り組むなどが示されている。
東京圏一極集集中を排除し若者に選ばれる地域を創生するという本事業が始まって以来の基幹となるお題目が改めて示されるということや、「一極集中は、進学や就職をきっかけとして続いており、女性の方により顕著な傾向がある」と付記するなど、本事業がこれまでうまくいかなかったことを認めている。
しかも、今回発表で特徴的なのは伊東良孝地方創生担当大臣の「人口が減少する中で前向きに取り組んでいくというメッセージが大事だ」というコミットメントである。人口が一定値まで減少することを覚悟して施策をうつ必要があるという方向性を示したものと受け止めた。
②山口県は昨年度8年連続過去最多を更新する4,578人の移住者があったと発表している。しかし、4,578人は県の人口の0.3%でしかなく、県の昨年の減少率は都道府県中でワースト9位、50年の将来推定人口は減少率ワースト10位であるという実績をどうみるか。さらに、移入率県内市町トップ周防大島町は、人口減少率については県内ワースト2となっている状況をどう認識するのか。
街おこし協力隊などの“よそ者”の活動をもって賑わいが創出されていることは大いに評価するが、それが人口増には結びついていない。
以上、①も②も多大な歳費を費やした創生事業は人口減対策にはほぼ効果がなかったことを示している。
③は将来人口に関連して。A表は人口問題研究所の「65年推計人口」である。40年後には団塊といういういびつな存在が無くなる。ここまでくれば若年層、壮年層、老年層の構成比が20年の状況からそうかけ離れているわけでもなくなる。
「出生数」試算㋑欄を注目いただきたい。14歳までの総数をを14で割ったその時点の年間平均出生数だが、40年後には昨年の出生数実績70万人から59万人にへの減少を予測している。そこで65年に20年並みの14歳までの若年比率11.9%を置き換えれば1年平均79万人の出生数を確保すればよい計算になり手に届く数値になる。
79万人を確保できれば20年時点の若壮老の均衡を保てるというなら、今の結婚促進、子育て支援の諸施策の継続が必須になる。この面での歳出は今後40年間の負担になろう。避けられない。
④さらに、69歳までを壮年層=労働人口と見なそうとする寺島実郎ほかの主張がある。現在65歳から69歳人口818万人は全人口の約6.6%で、このことから、この比率でもって65年の構成比を置換えた試算㋺では壮年、老年層のバランスは20年並みとなり、イコール壮年層が他層にささげる負担も現在並みとなる。現在の健康志向の時代を生きた若者は、40年後には老化進行度が相当年ズレると想定することはそう無理はあるまい。
③と④を考慮すれば人口減社会がお先真っ黒ともいえまい。
…次稿につづく。
