2025年10月02日(木)

コラム・エッセイ

No.90 地方自治考20・人口問題、財務問題⑦…コメ農家は大規模に集約する。ただし、小規模農家へは別の次元の支援を

独善・独言

 ㊆今回は地方自治運営と切り離せない農業行政の改革に触れる。ここでもキーワードは「集約」である。

 報道は連日コメの話題を取上げてきたが、論調は単に価格だけでなく流通経路からコメ農家のあり方に視点が拡がってきた。そして、そのコメ農家を保護し生産力を維持していくには集約が一番といういう意見が主流になっている。そこで、私も参加している故郷美祢市の「梅香営農組合」の状況を紹介しながら集約の効果を立証してみたい。

 山間部にある。我が営農組合は発足20年、組合員26戸、全地が圃場整備されており、不在地主の保有地も含めて地域内の荒廃地はゼロである。


 ㉘農作業には驚くような大型耕作機械が導入されており、肥料の散布はドローンで展開している。一般の農家が僅かな面積のたんぼをそれぞれ機械を揃えて耕作しているという、どこにもある風景⇒採算を度外視している旧来型構図とは大違いの世界である。まさに「限られた人数で農業生産が可能な仕組み」になっている。

 ㉙A表㋺「基幹的農業従事者=兼業でない自営農業経営者」の平均年齢は70歳を超え、㋥従事者の人口は5年間30%もの減になっており、10年後には半減する…県内は耕作放棄地だらけになるおそれがある。

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 一方、我が営農組合でも高齢化、担い手不足という事情は同じであるが、対応に柔軟性がある。私を例にとれば、農業生産の経験、知識がまったくなくても草刈り作業というだけなら今の76歳の私でも役に立てる。つまり、営農組合は能力別に分業することにより、また、大規模化、機械化、さらには省力化によって、ある程度は担い手減少危機を吸収できる。

 ㉚ここ3年、たんぼの畦にはあれほど作物に影響があると嫌った「草がらし」がまかれるようになった。機械が苗を植え残したたんぼの四隅は以前は手作業で補完していたが、最近は空白地になっている。人手不足対策としての省力化の対応は進んでいる。生産技術もリーダーの判断で年々改良されているものと思う。

 一方、従来農家は農協の指導はあるにせよ“去年も今年も”と従来行程を繰り返していると想像する。

 ㉛営農組合ではコメだけでなく麦、キャベツ、大豆、さつまいもなどを輪作している。このチョイス…適地判断、価格予想をもっての判断はリーダーの役割になる。

 従来農家はこうはいかない。高価な米作機械を遊ばせるわけにはいかないし輪作を試みる程の手数を好まない…よってコメつくりは“去年も今年も”の選択しかない。

 ㉜組合は営業利益段階では大幅な赤字になっているが、多額の助成金などで黒字化している。農業における補助金依存率は30〜50%といわれているなかで、大型機械導入時や中山間地域直接支払制度など組合があることで有利になる仕組みも多いと聞く。

 それでも今の規模でならリーダーが作物の種類を増やし合理化を模索する努力を継続しても、販路は農協依存から脱却できず、生産物を加工し「六次産業化」を試行するキャパもない…今の規模なら限界がある。

 ㉝以上、我が営農組合を通じてコメ農家の法人化、大規模化のメリットを取上げてきたが、今程度では効果は限定的ではないか。生産計画を立て技術指導をする生産部、商品設計や技術開発、設備更新の企画部、販路拡大のための営業部…そんな山口県一組合程度の大規模集約化をめざす必要を思う。

 コメ農業に限れば集約して大規模化して初めて将来見通しがたつと思う。ただ、集約化を強引に進め、従来型農家を見捨てることは地域づくりの面でもコメの供給量確保の面でもできない。しばらく二重構造であっても別の救済策が必要になる。   

…次稿につづく。

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