コラム・エッセイ
政→官→民→政
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子蔓延(まんえん)防止措置、緊急事態宣言のもと、感染抑制のためには飲食の機会を少なくすることだという思いの強い政府が、営業時間制限要請に従わない店を金融機関を通じて従わせよう、そうした店には酒類の納入をしないよう、国税庁を通じて締め付けようとしたことが世論の反発を招き、共に撤回となった。
指示に従おうとしない業者を彼等に、にらみの利く機関を使って言うことをきかせようというのか、弱い者いじめだ、汚いやり方だと悪評沸騰だったのだが、この2つの撤回の流れは同じではなかった。
金融機関を通じたルートの方は世論の反発と違憲の指摘まで受けて、どうもこれはまずかったなと自主撤回したと思えるような流れだが、国税庁経由の方はなかなか撤回には至らず、結局業界団体からの抗議に応えた国会議員達の動きで撤回に至ったという流れだったようだ。
お役所は業界の声ではなく、議員の声を聞いて撤回したのだ。この経過を見ていて、もう40年以上も前になる出来事を思い出した。
私たちのグループの活動の原点になっているのが、日系カナダ一世への支援活動で、老境を迎えた日系カナダ一世達が故国日本を懐かしみ、日本の文物や日本食を求めているがなかなか手に入らないということを知り、人形やカレンダー、折り紙細工、お茶づけ海苔や梅干しなどを、一般への呼びかけ、メーカーからの寄付を募って用意し送り届けようとしたのだが、最大のネックが輸送料金。何とか格安料金で輸送をと航空会社に懇願したが、門前払い状態でらちがあかない。
思い悩むうちにふとひらめいたのが、時の外務大臣が山口県選出の国会議員だということ。地元後援会のつてを頼って面会を取り付け、訪れた大臣室に大臣は不在だったが、話を聞いてくれた若い秘書官はその場から航空会社に電話をかけ、その結果支援物資の無償空輸が実現した。
航空会社と直接交渉しても成立確率はゼロの送料無料が、話の伝わる方向を変えるだけであっという間に実現する。
世に言う「政→官→民→政」の流れを実感できた瞬間だった。
この矢印の方向は三者の力関係を示すというよりも、矢印の方向には話は通じやすいが、反対方向には通じにくいということを示している。
要は、話は聞く耳の向いている方向から伝えるべきだということで、同じ話でも逆方向から伝えようとすると、十分な信頼関係がない限りまず伝わらない。話の伝わる方向を知ってそれを利用することは、そこに新たに利害関係を持ち込むのでなければ決して悪ではない。
この方向を知ることでその後物事が随分スムーズに進むようになったし、様々な道が拓けたと実感している。
(カナダ友好協会代表)
