2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

新型コロナ2題

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 新型コロナウィルスという言葉を耳にし始めてからほぼ半年。半年前には想像もしなかった世の変わりようで、こんなことが自分の日々の生活の中で現実に起こるのだということが、まだ十分に信じ切れないでいる。

 技術の進歩、経済発展に伴って日常生活の様式は変化してゆく。ラジオからテレビへ、手回し計算機からパソコンへ、固定電話から携帯電話へ、それに伴う行動や考え方の劇的な変化を体験してきたが、一つの時代から次の時代に移るにはそれなりの移行期間があって、少なくとも数年は時の移りに順応する時間があったと思う。ところがこの新型コロナウィルス禍では、これまでとは様子が違う激しさで変化が起こっている。

 一つは内でも外でも、視界に入る全ての人が一斉にマスクを着用しているという異様な光景の日常化。数年前、スマホの登場とともに見られ始めた、車中でスマホの画面に見入る乗客の姿。時折の上京の際、座席に並ぶ老若男女のほとんどが周囲に全く無関心にひたすら画面に見入る姿に、さすが大都会は時代の流れに敏感だと感心して土産話に披露していたのが、1年経たぬうちに全国共通の光景となった。

 技術が社会を変える速さに驚いたものだったが、コロナマスク姿の普及は更に桁違いのスピードだ。電車の中で、買い物のスーパーで、マスク姿が目立ち始めたと思ったら、1カ月そこそこの間に殆ど全てがマスク姿となり、マスクをしないでいると恥ずかしくて顔が上げられない。そのうち、どこに行くのにもマスク着用が当たり前の感覚になっている。これほど短期間に日常生活の行動が変わったのは、初めての体験だと思う。

 もう一つコロナ禍で変わったのは、いや、変えられたのは金銭感覚。感染拡大防止のための行動自粛の結果生じた景気低迷対策に立てられた補正予算が、今年度は第1次、第2次合わせてもう60兆円近くになっている。昨年までの5、6年間では平均3兆円位なので、20倍近く、しかもこれで収まるかどうかも分からない。突然に一桁繰り上がった金額にあぜんとしていると、その莫大な予算を使った事業の委託手数料が数千億円と平然と言われる。

 確かに従来の事業の手数料比率で計算すればそうなるのだろうが、こんな額を並べられると、数十億円、数百億円が誤差範囲に感じられて、国政選挙にまつわる買収疑惑で報じられた数十万円の授受も気にならず、1,000兆円をはるかに超えて増え続ける国の借金にも危機感を感じなくなってしまうのではなかろうか。コロナウィルス禍のもたらした金銭感覚の異常は、国政への後遺症として長く尾を引きそうだと感じている。

(カナダ友好協会代表)

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