2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

ファクターX

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 新型コロナウィルス禍が顕在化して早半年。備えも解決策もないままに画面に映し出される棒グラフの長さに、あるいは怯え、あるいは安堵しながら、せめて自分の住まう県だけは、自分の行動範囲だけはこの禍が拡大しないで欲しいと願うばかりの日々を過ごしている。

 得体の知れない、姿の見えないウィルス相手に手洗い励行・マスク常着の自衛手段はすっかり身に付き、電車の中、スーパーでの買い物中、マスクを着けていない人にお目にかかることはまずなくなった。スマホの普及期、電車の座席で一心にスマホの画面に向き合う人の数が日毎に増えていく光景に、時代の変化を目の当たりにする気持ちになったのものだったが、マスク姿の広がりはそれをはるかに上回っている。

 突然に世界中を襲った、とんでもない災難をとにかく避けて身を守るしかない状態なのだが、それでも時間の経過の中で積み重ねられる経験の中から、このウィルス禍の傾向が幾つか見えてきている。その中で指摘されているのが、先進国の中で日本の死者率が桁違いに低いということで、「ろくな対応をしていないのに、なぜ?」とか「日本の奇跡」などと言われ「日本モデルの勝利」などと悦に入っている人もいた。

 この事実に関してノーベル賞受賞者の山中教授は、このような状況をもたらしている原因となる要因を「ファクターX」と名付け、ファクターXを明らかにすることによって、新型コロナウィルス禍に対処する方策を得る道が拓けると語っておられる。

 これについてTV画面に登場するコメンテイター達が様々に自説を述べ合っている。

 曰く「日本人は握手やハグなど体を直接接触させることが少ないからだ」、「日本では履物を脱いで家に上がるから、ウィルスが屋内に持ち込まれにくい」、「日本語の発音は飛沫が飛び散りにくいから」、果ては「日本人はお上の言うことにはよく従うから」等々。

 確かに今、この時に限って欧米と比較すればこんな違いが思い浮かぶだろうが、世界規模の流行病は今回が初めてではなく過去にもあって、日本も他国と同様に多数の感染者と死者が発生している。この時でも日本人と欧米人の生活様式の差はあったし、お上に従うことは今以上だっただろうから、こんなことがファクターXだとは思えない。

 これに限らず、日々巻き起こる説明困難な事ごとについてつじつま合わせのことを語っていれば成り立つコメンテイターという役どころは、まことに気楽な商売だと思う。もちろん山中教授はファクターXがこんなものだとは考えておられないだろう。では、何が?それを見出すのは科学の力、活用するのが政治の力だと思う。

(カナダ友好協会代表)

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