2026年09月29日(火)

コラム・エッセイ

思い違い。心得違い。

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 新型コロナウィルスの猛威は世界を覆い、収束の気配は見えない。この病害の怖いところは対処法と治療法が確立していないことで、外見では判別できない潜伏期にも他人を感染させる危険が大きいというのだから、拡大を防ぐためにはとりあえずは3密(密閉・密集・密接)を避けるという対応にならざるを得ない。

 ウィルスは攻撃相手を選ばない。いつ自分が感染してもおかしくなく、有名人達の感染例も知られ始めたし、イギリスでは国難対処への陣頭指揮を執る首相と保健相までもが感染する有様になっている。そんな中で東京都知事から発せられた花見(花見だけではなく、他の密集行動も)自粛要請とそれに伴う都管理公園の閉鎖。折しも桜見頃の季節を迎えて、例年なら満開の桜のもとで、昼は卒業式・入学式・入社式、夜は仲間との宴と賑わうところだが、それを敢えて取りやめるよう、桜の下に集まらぬよう求め、公園を閉鎖するのは、唯々、ウィルス感染を防ぐためであって、指定された公園で花見をしてはいけないというのが主旨ではないことは、常識と良識のある人ならば自明のことだ。

 そんな折に報道された、最高権力者夫人の花見画像。満開の桜を背景に、集団の中心に収まってにこやかに微笑む姿には「なぜ、この時に、こんな画像を」と呆れるばかり。いつものことだが、この人、何を考えているのだろう。

 追求された最高権力者は「あれは閉鎖された公園の桜ではないから、問題ない」という主旨の答弁をしたが、それは「法の規定に触れていないから問題ない」という、さまざまな政治問題の追求に対して用いてきた言い分と同列のもので、この場合に通じる釈明にはなっていない。「閉鎖された公園で花見をしたのではないか」と追求されたのなら「違うよ。知り合いのレストランの庭だよ。」で一件落着かもしれないが、問題になっているのは閉鎖公園での花見かどうかではなく、公共の公園さえも閉鎖しなければならない時に、国難収束の陣頭指揮を執る人の最も近くにいる人の、自粛要請もどこ吹く風とばかりの画像開示への判断だ。

 自粛要請への挑戦とも取られかねないことを、自身の本意ではなかったとしても、なぜ許したのだろう。法に触れる・触れないの問題ではない。問われているのは、自分がしてはならないこと、しなければならないことを判別するモラルの問題なのだ。この人に必要なものは「閉鎖公園ではないから問題ない」という庇いの言葉ではなく、「そんなことはしてはいけない」というたしなめではないだろうか。

 自身の立場についての思い違いと、状況判断への心得違い。この後いつまで繰り返すのだろう。

(カナダ友好協会代表)

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