2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

別人格?

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 子息が、関連事業を所管する官僚を接待していたと報じられ、国会で追及された首相が「詳細はあずかり知らぬ」「日常の往き来はなく、互いに独立した別人格」と、40歳を過ぎた息子の行動にまで責任を追及されるのは心外という答弁をしていた。

 確かに、親子・親族といえども、人は生まれた時から互いに別人格。監督義務もない成人後の行動まで責任を追及されてはたまったものではないという気持ちは十分理解できる。それでも、その行為が罪を問われたり、誰かが迷惑を受けるものであった場合は、躾(しつけ)の至らなさの結果を詫び、できる範囲での補償をしようとするのは、庶民の世界では常識的な対応で、法的責任はないからと、一概に「我、関せず」と突っぱねるのは反感を呼ぶことが多いだろう。

 この話を聞いてすぐ頭に浮かぶのが、あの、自由奔放・好き勝手・制御不能のアキレさんのこと。自分の伴侶が誰であろうと、彼と自分は別人格だから、自分の行動を夫の立場を忖度して規制することなど不要と動いた結果、呆れられるばかりか悲惨な事態まで招いたのに、誰にも止められず、反省もない様子がいまだに聞こえてくる。

 確かに別人格だから、夫が何者だろうとそれに縛られることなく行動して構わないはずだが、自分が何をしようと周囲が受け入れているのは(受け入れざるを得ないのは)、別人格であるはずの夫君の力を周囲が忖度したからで、決してこの人の力や人格に服してのことではないだろう。

 そもそも自分一人の立場で専用機で諸国を訪れ、賓客として迎えられることなどあり得ないことは、すぐわかるはずのことだ。現首相の子息の場合も、そうそうたる官僚達が接待に応じたのは、本人の力量のゆえ(それでも違法行為なのだろうが)ではなく、父親たる人の名の圧力に屈したからだということは容易に想像できる。

 そして、真相が明らかになった場合、結局父親たる自分に大きな影響が及ぶことになるのだから、この人が息子にしておかなければならなかったことは、周囲との利害関係に決して親の立場を持ち出さないことを厳しく申し渡しておくことと、部下である官僚達にも、業務遂行が自分への忖度で曲げられることのないよう、周知徹底しておくことだった。

 それをしないで「詳細は承知していない」「別人格だから関係ない」と突っぱねることは、結局は別人格者の行為で国政まで歪めてしまうことになる。長期政権に仕えてこの人が学んだことは、別人格者の行動を制御できないことの結果の重大さを知ることでなく、「あれは私人だ」と言い逃れて世間の忘却を待つ手法の方だったようだ。日本の将来の危うさを感じてしまう。

(カナダ友好協会代表)

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