2026年09月29日(火)

コラム・エッセイ

お粗末デジタル

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 新設されるデジタル庁担当大臣の叱咤激励の大音声が響き渡る一室。オリンピック・パラリンピック入場者管理システム開発事業費の値切りを指示する内容で、弱い立場にある納入業者への恫喝めいた言葉も含まれ、大臣がこんな言葉を使うのか、権力をバックにしたパワハラではないかと話題になった。

 これには背景があって、システム発注の金額が高額に過ぎると国会で追及され、首相が返答に窮したことに担当大臣が忖度(そんたく)し、何が何でも契約金額減額を実現して忠誠心を示そうとしているのだという解説もされている。

 税金で支払われるシステム開発費が少なく抑えられることは悪かろうはずがない。値引き交渉に当たる部下が不退転の決意で臨めるよう叱咤激励することはむしろ当然のことだし、多少の激しい言葉が使われるのは、身内の中ではあり得ることで、特にこの例だけが取り上げられて批判の対象になることもないだろう。

 しかしこれにも突っ込みどころがあって「なに、値切られた業者も他の事業の受注で取り戻すのだから、痛みは感じていないだろう」とも言われている。結局は忖度大臣のパフォーマンスの一幕で、こんなふうに国の行政が仕切られているのが衆目にさらされたことで政治不信の種がまた芽を吹いたことにやるせなさとあきらめの感ひとしおの思いがする。

 だがこの茶番劇で明らかになった最大の問題は恫喝まがいの値切り指示でも、そもそも契約金額が高すぎたということではない。もちろんそれも問題なのだが、もっと致命的な問題は、この大臣の発言はオンライン会議中のことで、発言は別室の多数の参加者にも共有されていたのだが。どうもこの大臣その事を忘れていたらしいのだ。

 警戒心ゼロで、身内の会合で失言を繰り返す三流大臣と変わるところがない。デジタル庁と言えば、行政システムがより適切に効率よく動くよう作業のデジタル化を進めるための司令塔となる部門で、国会議員切ってのデジタル通と評判のこの人が担当大臣として総指揮を執るらしいが、今回のてん末を見ると、どうもこのお方は技術用語やスマホ、アプリの操作には詳しいようだが、一番大事なことが抜け落ちているらしい。

 デジタル化推進の指揮者に必要なことは、デジタル化で出来ることだけでなく、してはいけないことも熟知していることだ。

 誤った情報が紛れ込まないこと、不必要な情報流出が起らないことに何よりも細心の注意を払わなければならない人が、自分の話が流出する危険にあることも知らずにしゃべっていたのだとしたら、こんな人にデジタル化総指揮を任せてどうなることかと、空恐ろしくなってくる。

(カナダ友好協会代表)

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