2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

コロンブスの卵とメタバース

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 フェイスブックもメタと社名変更する昨今、メタバース(仮想空間)というワードがにわかに耳目を集め、学校教育現場や大学での就活でも利用される動きもあるという。メタバースとは、メタ(meta:超)+ユニバース(universe:宇宙)からの合成語で、アバターと言われる分身を介して現実世界とは異なる3次元での仮想空間やそのサービスを指すという。ゲームなどの世界ではすでに馴染みがあるとのことだが、日頃ゲームの世界とは無縁の私のような人間にとっては、まるで異国の文化だ。

 国が「デジタル田園都市構想」を打ち出し、「地方のデジタル化によってビジネスや教育、医療といった様々な課題を解決し、地方と都市の差を縮めようとするアイディア」が昨今のこのコロナ禍で徐々に広がりをみせ始めているという話は様々な情報で知ってはいた。が、まさか「デジタル技術活用型の若者自立就労支援に係る調査・研究について」という提案をX県から私たちのNPO法人JACFAが受けるとは、まさに青天の霹靂である。

 このメタバース空間の活用の目的としては、「ひきこもり等長期無業の状態にある若者を対象に、デジタルの力を活用し、バーチャルでの支援と地域若者サポートステーションでのリアル型支援を組み合わせた仕組みの構築とその試行検証を実施し、若者自立就労支援の充実を図る」とあり、おそらく日本初となる調査・研究と思われる。JACFA発足以来の理事でもある山口大学大学院特任教授のY氏の研究によるところが大きい。

 内容としては、「デジタル技術活用型の若者自立就労支援研究チーム」の設置・運営として研究チームを設置し、試行実施等、計画を具体化し、実施後の成果・ 課題の検証する中間・実績報告を取りまとめること。ひきこもり等長期無業の状態にある若者への就労支援に詳しい研究者、デジタル技術の活用に関する専門家、地域若者サポートステーションや行政関係者等が連携していく。

 地域若者サポートステーションは現在全国で177箇所あり、就労への一歩を踏み出せない若者や就職氷河期世代の就労までの様々なサポートを行う厚生労働省所管の支援機関である。JACFAが受託運営するサポステでは過去に全国1位、2位の就職者を出し、スタッフ一同とともに利用者に寄り添う支援を10年以上行っている。ここ山口県から出発し、今は他県に主たる事務所を置いて活動中である。

 コロナ禍で、リモートワークやオンライン授業といった概念が社会にすっかり定着したように、「メタバース空間での支援」という概念も、近い将来にはもしかして一般的になっているのだろうか?温もりある人とのつながりをどのようにデジタル世界とうまく融合し、ひきこもり等無業の若者の新たな支援策となり得るのか、そして社会における孤独孤立をいかに防いでいけるのかを念頭に、現場の声を取り入れながら、未知なる可能性を模索しながら試行錯誤中である。

 まずは、このメタバース空間に少しでも多くのひきこもり等長期無業者がたどり着けることを願いながら、「コロンブスの卵」の日々はまだまだ続きそうだ。

(カナダ友好協会代表)

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