2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

仰げば尊し

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 3月は卒業の季節。幼稚園から小中高校、大学、そのほか様々な修学の場で卒業式が行われる。

 通い続けた学舎に、薫陶を受けた恩師に、出会い友情を交わした学友に、今日は別れを告げ、それぞれが新たな出発への歩みを踏み出すその日を象徴するように歌われたのが、「仰げば尊し」と「蛍の光」だった。私たちの年代では卒業式といえばこの二つに決まっていて、その他の歌の出番はなかった。

 それがいつの頃からか様々な歌がこの二つの定番曲に代って歌われはじめ、音楽の教科書からも姿を消したかつての定番曲がすっかり忘れ去られるような状態も起こっていたらしい。新しく取り上げられた卒業式の歌は、別れや友情、思い出を懐かしむ気持ちに通ずる既存の歌や、新たに卒業への思いを込めて作られたものなど、幅広くそれぞれの学校で選ばれていたようだ。みなそれぞれにいい歌で、中には詞もメロディーもその歌の出来た背景も感動的なものもある。

 卒業式で「蛍の光」や「仰げば尊し」が次第に唄われなくなった背景として、一つには文部省唱歌という響きがいかにもお上の押しつけと思えることへの反発や、使われている言葉が分りにくい、「身を立て名を上げ、やよ励めよ」という歌詞が立身出世主義の奨励だと嫌われたことが、個人の自由な行動を尊重する社会の流れと合致した結果と考えられるのだが、それは理解するとしても,私には卒業式の歌といえばやはり「仰げば尊し」しかない。

 長年唄ってきたからとか、新しい歌は知らないからということではなく、歌詞もメロディーも卒業に臨む気持ちにピタリとはまっている。最近卒業式の新しい定番曲となっている歌も確かに素晴らしい。かなり長い歌詞だが、友情の素晴らしさを細やかに綴り、別れに臨む力強さを美しいメロディーで包んでいる。

 一方「仰げば尊し」はその思いを「思えばいと疾し この年月 今こそ別れめ いざさらば」に凝縮している。人の交わりの機微、友情の美しさはいくら言葉を重ねても語り尽くすことは出来ないが、逆に言葉少なく語ることによって万感の思いをその中に包み込むことが出来る。そんな力がこの歌にはあるように感じる。

 最近「仰げば尊し」や「蛍の光」の再復活の兆しがあると聞いている。それは懐古主義の高まりということではなく、卒業の心情を表すにふさわしい言葉の力を多くの人が改めて感じたからではないだろうか。

(カナダ友好協会代表)

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
山口コーウン株式会社

「安全で 安心して 長く勤められる会社」をスローガンに、東ソー株式会社等の化学製品を安全かつ確実にお届けしています。安全輸送の実績でゴールドGマーク認定を受け、従業員が安心して働ける環境と「15の福利厚生」で従業員の人生に寄り添っています。

ピアレックス

遺品整理でお困りではないですか?県内出張見積は無料!不動産売却や空き家じまい(解体)もお気軽にお問い合わせください。

スバル合同会計 周南事務所

相続時や建物の購入売却時の相続税・資産税のご相談。
大切に育てた事業の譲渡や事業の拡大にむけて、複数の専門業者との提携で、お客さまの求める結果を一緒に目指します。

東ソー

東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。