2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

慮って忖度

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 「慮る」に「忖度」、漢字の読み方テストに出てきそうな言葉。心遣い、気配りと同じたぐいの言葉だが、政・財・官界はともかく、庶民の日常会話では使われることはほとんどなかった。それがこのところ連日、画面、紙面で飛び交い、日常語になってしまった。おそらく本年の流行語大賞はこれで決まりだろう。

 某学園の国有地格安取得問題(事件)の報道に伴ってクローズアップされた「忖度」だが、この言葉自体には何の罪もない。人の心は外からは見えないし、言葉で語られたことでも、心の中そのものを表しているとは限らない。周囲はただ、うかがい知るのみで、それが忖度ということだ。

 心の中を確実には知ることができない者同士でできている社会を効率よく営むためには、思いやり、気配り、気遣いなど、忖度は必要不可欠だ。将来、AI(人工知能)が管理する社会が訪れたとしても、その管理ソフトには忖度の要素は必ず盛り込まれることだろう。

 だから、忖度が良いか悪いかの議論はあまり意味はない。忖度がなかったと言い張っても誰も納得しないだろうし、あって何の不思議もない。今回の問題は、忖度の対象にしてはならないものまで含めて忖度したことにある。

 もし、この土地が担当役人の私有地であったのなら、某学園の背後にある力を忖度して破格の安値で譲っても、税務署は贈与税の対象だと言い出すかもしれないが、国会で問題になることはない。だが、忖度の結果が、国民の財産である国有地の格安譲渡となると、そうはいかない。国民はそんな忖度などしていないからである。

 担当役人が某学園の要求にあれこれ忖度するのは勝手だが、忖度の結果、してはならないことをすることは許されない。恐らく彼(もしくは彼ら)はそうすることは自分たちの権限だと思っているのだろう。

 しかし彼らの役目は、国民の財産を守り管理すること、そのために法に基づいて処理することであって、国有財産を自分の財産として処分することが許されているわけではない。

 国有地に限らず、国有財産の不可解な取り扱い、止まることのない税金の無駄遣い、さらには遅々として進まぬ行政制度改革など、今回の事件で改めて浮き彫りになった不可解、不届きな行政行為の根底には、行政制度・組織を自分たちの私有財産扱いする官僚のおごりがある。

 能弁に語る学園理事長、お前たちの知ったことではないとばかりに答弁する鉄面皮の役人たちを、ドラマの登場人物として面白く眺めるばかりに終わらせてはならない。

(カナダ友好協会代表)

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