2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

土は大丈夫?

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 果てしなく続くかと思われた酷暑も「暑さ寒さも彼岸まで」の先祖代々の伝え通りようやく収まり、待ち望んだ秋の到来となった。

 行楽の秋、スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋、勉学の秋、食欲の秋。秋の表現はさまざまだが、全てを包んで、四季を巡らす自然の力を一番適切に表してくれるのは「実りの秋」春播いた種が成長し、実となり、果実となって収穫の時を迎える。

 実りの秋を思わせるのにやはり最もふさわしいのはあたり一面を黄金色一色に染める稲田の光景。何百年も、いや、千年以上も前からこの国で生きる人の命を支えてきた米は、これからも少なくとも私たちの世代が関知できる時間の範囲では、変わることなく主食であり続け、田植えから収穫への光景が変わることなく続けられていくのだろう。

 でも、少しずつ変わっているのに気付く。以前なら見渡せる平地は余すところなく田圃で、春はれんげの花が咲き秋は一面の黄金色だったのだが、いつの間にか空き地が目立ってきた。

 豊かな国になるために高く売れるものを沢山作って売りまくって稼ごう。その代わり米作りは抑えて食料を輸入して辻褄を合わそうとお国が言う。

 かくて、休耕田という空き農地が増え、秋の光景も少し変わったが、それに慣れたと思ったら、またまた変わってきた。色が変わっている。黒いのだ。休耕田や空農地が太陽光発電パネルで埋め尽くされている。

 遊休地の活用というばかりでなく、地球温暖化対策自然エネルギーへのエネルギー源転換のエースとして、休耕田に太陽光パネルを設置する。いいアイデアだ。理想的な自然エネルギーだが狭い日本では大規模設置が困難な太陽光発電用地に、使われないで放置されている休耕田を使うのは、まさに一石二鳥だと。

 しかし、ちょっと待て、それでいいのかと思う。いずれ迎える大量の廃棄パネル処分の問題は当然考えておかなければならない。しかしそれだけではない。土をどうする。今日本が思い知らされていることは、食糧自給の大切さだ。他国が日本のためにいつまでも必要なだけ食料を売ってはくれない。

 ウクライナ戦争でも世界中が思い知らされている。工業品輸出・食料輸入の貿易バランスが成り立たず、再び米増産を果たさなければならなくなったときどうするのか。敷き詰めたパネルを取り払えば再び美田は戻るのか。稲を育てる田はただ土地があればいいのではない。

 田は水と土とで成り立っている。毎年迎える実りの秋は、田植えをし水をやれば現れるのではない。

 その土地に根付き、何代にも何百年にも亘って農家の人たちが作り上げてきた土が稲を育てているのだ。その土を踏み固め、光を遮って何十年も他用した後で、さあ、また良田になって稲を育てておくれと言って、容易に復活できるのだろうか。

 知識も経験もない私には答はない。こんなこと杞憂であればいいのだが、でも、気になる。

(カナダ友好協会代表)

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