2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

今年も来ました。この季節

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 今年もやって来たこの季節。節分の声を聞けば、春遠からじの思いに心うきうきと華やいできそうなものだが、現実はその真逆。こころ鬱々と沈む思いに襲われてくる。鼻むず痒く、思わず放つクシャミの連続。ああ、今飛んでいるなと、目には見えないその相手を睨みつけたい思いにかられる。

 そう、春の到来は私にとっては花粉症の到来。萌え出ずる春の訪れを喜ぶよりも、ああ、これからしばらくまた憂鬱な時を過ごすのかと、「がっかりと、盛り下がる」気分に襲われる。

 先日気象ニュースの時間に花粉警戒報道があった日には、正確に目の痒みが始まった。そして鼻づまりへと進行するのが花粉症の一般的パターン。かれこれ20年近く悩まされている望まざる年中行事だが、我がつれ合いはその上をゆく半世紀近くの症歴で、病気というよりこの時期の正常な体調変化となってしまっている。

 まだ花粉症という病名もなく、一般にも余り知られていなくて何科に行けばいいのか分らず、先ずは訪れた眼科で「最近、こんなのが増えたんだよなー」と医者すらどう処置していいか分らなかった時代に発症した、花粉症の先達・草分けであることが密かな誇りでもあるようで、花粉症を語り始めると、尽きるところを知らない。

 半世紀前にはマイナーだった花粉症が一気に広まった原因として、食生活の変化だとか、戦後植林され杉林が花粉の大発生源になっているからだとか、はては、かつては日本人のほとんどが保有していた寄生虫が駆除されてしまったからだとか、様々なまことしやかな説明がされているが、簡単には腑に落ちない。

 なにしろ花粉症はある日突然、何の前触れもなく来るのだ。去年まで、いや、つい昨日まで、何ともなかったのに、突然、しかもトップギア状態で襲ってくるのだから、食生活の変化や寄生虫の有無で説明されてもなかなか納得は出来ない。

 杉植林説は説得力があるようにも思えるのだが、つれ合いに言わせると、自分の中学生時代には、杉花粉をたっぷり蓄えた杉の実を、細竹を筒にした杉鉄砲で撃ち合って毎日のように遊んでいて何ともなかったのだから、それも頷けないと言う。

 もう一つ閾値(いきち)説というのがあって、体内に次第に蓄積してきた原因物質がある量に達したとき発症するから、突然劇的に来るのだというのだが、やはり、なぜ近年広まったのか説明が難しい。謎を秘めながら今年も始まったこの季節。憂鬱の覆いはしばらく解けない。

(カナダ友好協会代表)

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