2026年09月29日(火)

コラム・エッセイ

平和賞?

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 日本人科学者のダブル受賞に沸いた昨年のノーベル賞。自然も経済も政治も、何もかもが解決も逃げ道もなく追い詰められたような安らぎのなさに塗り込められた中で、ひととき笑みを取り戻せたように感じた慶事だったが、そのノーベル賞の創設の趣旨に最も適うような平和賞の昨年の受賞者が、受章した平和賞のメダルを某国大統領に贈呈したと報じられた。

 昨年末月に受賞した記念の金メダルを、未だ自分の手で温める間もないほどの新年の年明けに、よりにもよってあの人に贈呈するなんて一体何を考えてのことかとあきれる思いで報道を受けたが、相手が取引大好きのあの人なら、取引材料としては格好のものだったかもしれないと、妙な納得もしてしまった。

 平和賞大好き。世界の紛争関係交渉の場にあれほど口出し関与してきた自分をなぜ世界平和推進者として讃え授賞しないのかと臆面もなく言い続けているのだから、へつらいの賛辞やレプリカでなく、本物のメダル(賞状付きかどうかは未確認だが)なら、大喜びで取引に応じるのではと贈呈者は期待したのかもしれない。

 メダルは本物でも、賞状に書かれた受賞者の名前までは変わらないだろうから、さすがのあの人も取引には応じなかったようだが、たとえて言えば、持っていれば莫大な価値のあるオータニ選手の記念のホームランボールを自分の想うあの人にお返しを期待して差し上げたら、ありがとうと受け取られただけのようなこの話。

 取引大好きのあの人も、メダルを持っただけでは受賞者としての尊敬も賞賛もないことは分かるから、「サンキュー」の言葉くらいしか出せなかったのかもしれない。

 この話、これで終わるのか、まだまだ先につながるのかわからないが、あの人が、生きているうちに平和賞欲しいの願いは収まることはなさそうだから、これからも、自分の意のままになる大国の力を背景に賞獲得への意欲と努力は続いていくことだろう。

 でも、あの人のあのやり方では到底無理だよねと思いながら、案外あり得るぞという気もしてくる。

 ノーベル平和賞は「国際的な友好、軍縮または平和会議の開催・推進に最大・最善の貢献をした個人・団体に贈られる賞」とされている。人間社会の問題・紛争の解決は煎じ詰めれば取引だから、動機(人の心の中は他人には分からない)はどうであれ、友好的解決と見なされる解決に導く成果を重ねれば、授賞の条件は満たされそうだから、それが出来る権力を握っているあの人がそれを実行すれば晴れて受賞者に名を連ねることが出来るだろう。そうなったとしても、ふさわしい成果を挙げた者への授賞に異議は唱えられない。

 もっとも、平和賞受賞でも、これまで重ねた弱い者いじめの数々は忘れられることなく、永遠に過去帳に記録されるのだが。東西南北総トランプ化のような2026年。世界はどこへ向かうのだろう。

(カナダ友好協会代表)

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