2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

人生百年

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 人生百年時代構想というのがあるそうだ。ある海外の研究を元にすると、二〇〇七年に日本で生まれた子どもは百七歳まで生きる確率が五〇%あり、この超長寿社会に備えるため、内閣総理大臣を議長とする「人生百年時代構想会議」が発足している。

 男女ともに八十歳を超えている日本人の平均寿命。医療技術のさらなる発達と社会保障制度の充実が続けば、人生百年もあながち夢物語ではないかもしれない。ただ、この話、ちょっと引っかかるのは、「ある海外の研究を元にすると」というところだ。なぜ日本の研究を元にしないのか。

 百年という政府の数字を聞くとすぐ頭に浮かぶのは「百年安心年金」。今後百年は安心して年金を受給できる体制にすると大見得を切ったその言葉がまだ耳に響いているうちに、空手形であることがあっさりと露呈。保険料率の引き上げと支給年齢の繰り下げだけが残った。

 また、人口減少が大きな社会的問題として関心を持たれ始めたころ、年々低下する出生率を危惧(きぐ)する声に官僚たちはあれこれのデータを駆使して予想グラフを示し、大丈夫、回復すると言い張ったが、今に至るも回復せず、国の予想の根拠薄弱であることが事実で示された。

 将来構想を立てる根拠が自前のものでは国民に信用してもらえないことを十分学習したのか、最初から海外研究を元にすると、と断りを入れるところはかなりうさん臭いが、元気で長生きすることで少子化による人口減少を少しでも緩和できるよう、必要な社会体制を整えておくことは間違ってはいない。

 だが、本当に人生百年時代は来るのか?その海外の研究がどんなものなのかまだ知らないが、そうは思えないと我がつれ合いは声を上げる。

 「平均寿命八十歳以上というが、今その寿命を保っているのはすべて戦前生まれで、終戦時には十歳を超えていた人たちだ。人の健康には生まれてから三歳くらいまでの栄養状態が極めて重要だという。我々世代は一番重要なその時期に戦後の大混乱の中、ろくなものを食っていない。それに高度成長期以後の世代は生活万事、特に食生活はアメリカ化され、ハンバーガー、ポテトチップス、食品添加物漬けだ。だから我々以後の世代がこれまでの長寿化と同じ流れに乗っている保証は全くない。これからはむしろ平均寿命が低下するのではないか」

 そうかもしれない。そんな予想は当たってほしくないし、かと言って、税金の浪費に終わりそうな構想に白紙委任をする気にもならない。せいぜい健康を気遣いながら、一日を平穏に過ごすよう努めていくしかないだろう。

(カナダ友好協会代表)

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