2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

虚礼、儀礼?

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 夏至が過ぎると浮かんでくる「お中元」の文字。起源をたどると、一年を三つに分けた(三元)の真ん中の時期ということらしいが、起源にまつわる知識はなくても、生協宅配の通い箱で届けられた今年の注文票を見ると、ああ、今年もこの季節になったのだなと同封されたカタログの商品に目が移る。

 注文票には昨年の送り先と品物が記録されていて、カタログのページを眺めながら、この方には何が良かろうかと思い巡らしながら選んだ1年前を振り返るときが訪れる。普段は行き来する機会も、言葉を交わすことも少ないが、長いご縁がこれからも続くようにと願う方々で、それを自覚する機会が年賀状とお中元なのだろうが、そうではないけれど離れることなく保っていたい関係をつなぐ方法としては、いい伝統だと思う。

 「虚礼廃止!」の叫び声が耳元で聞こえてきそうだし、確かにお付き合いの密度からは、年賀状も含めて儀礼的と言える行為なのだが、それでもその行為には必ず反応(礼状、メール、電話)があって、最近況がもたらされる。あまりに細い1本の糸だが、確実に自分達がつながっていることを糸電話の糸のように教えてくれる。

 品物選びにも少し気を遣う。環境があまり変わっていないだろうと思える先には、毎年同じものがいいだろうと続けているが、家族数が変わったり、成長の著しい年頃の子どものいる家庭には、人数で割りきれる数の内容の品を選んだり、食べ物の種類を昨年とは変えたり、まだ会っていない姿を想像したりしながら注文票に書き込む時間は、何となく楽しいもので、新年間近な時期に昨年の賀状の書き込みや写真を見返しながら年に一度になったつながりの確認をするあいさつ文を考えている時の気持ちと重なっている。

 お中元、お歳暮と言えば思い出すのが、わがつれ合いから聞いた昔話。

 入社してまもなくのこと、職場の上司に伯母さんが、おいがお世話になっておりますとお中元を届けたところ、その上司は翌日つれ合いに「君と私は個人的な感情でなく、あくまで仕事を通じてつながっているのです。共通の目標に向かって共に励むことが私たちをつなげているのだから、このような気遣いは無用です」と、お中元の品を返されたそうだ。

 この話、全くその通りとは思わないが、一つの見識だとは思う。ライオン宰相と言われたあの首相もお中元お歳暮の類いは受け取り謝絶だったというが、同じ趣意のものなのだろうか。

 虚礼といえば虚礼、儀礼的な慣行といえばそうなのかもしれないが、社会活動からの遠ざかりを自覚する中では、年に一度でも、か細い糸がしっかりとつながっていることを確認できる手段が、苦心して考え出さなくても古き良き慣行としてあることのありがたさをいつも感じている。

 コスパ、タイパのかけ声に合わせて、賀状仕舞い、虚礼(?)廃止の流れが大きくなるのには、もう少し逆らってみたい。

(カナダ友好協会代表)

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