コラム・エッセイ
No.24 「悲しき農村」⑤ 病虫害と農薬・肥料(4)
中須里山通信 形岡 瑛筆者は、以前、米の等級検査で斑点米が多いという理由で2等にされたことがある。カメムシ(写真)が吸った後米粒に黒い斑点が残る。
農水省は、カメムシ防除についてネオニコチノイド系農薬を推奨する。
「ネオニコチノイド系農薬(以下ネオニコ農薬)は、カメムシのような吸汁害虫に対して優れた防除効果を持つ殺虫剤です。他の殺虫剤に比べて、人に対する毒性が弱いので、水田で働く人が自分の健康や米を食べる人の健康を考慮にいれた場合に使いやすいのです」(*1)
なぜ「吸汁害虫」に有効なのか。それは、ネオニコ農薬が浸透性農薬だからである。しかし、その浸透性という特性が生態系や人への被害をもたらす。
浸透性農薬は、作物に吸収されて作物全体に浸透する。長く残留する。洗っても落ちない、人が米や果物を食べ、お茶などを飲むと一緒に吸収され、体内に蓄積されてさまざまな障害を起こす(*2)のである。では、なぜ、農水省は多くの専門家の指摘に耳を貸さないのであろうか。
農薬が生態系や人の健康に及ぼす害が軽視されるのは今に始まったことではない。
生態学者伊藤嘉昭氏は以下のような事例を消化している。
「パラチオンは猛毒であるのに、毒性の試験も解毒法の研究もなしに、輸入後一年未満で実用に供されたのである。1952年8月14日、静岡県で18歳の少女がパラチオン中毒で死亡した。1953年には、実に70人の農民や普及員が散布及び取扱中に死んだ。こわがる農民に対して『大丈夫だ』と農薬を溶かした桶に手を入れてかきまわして見せた普及員がまもなく死ぬ、という事件も起きた。」(*3)
ネオニコ農薬ではここまでの被害は出ていないが、特に発育期の胎児や幼児に深刻な影響をもたらすという警告が発せられており、ネオニコ農薬の出荷量の増大と発達障害の発生との相関関係も夙(つと)に指摘されている。(*4)
2013年8月21日「あきらの田んぼ」
*1=農水省「農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組」(2016・11)
*2=黒田洋一郎、木村・黒田純子『発達障害の原因とメカニズム』第8章(2014河出書房新社)
*3=伊藤嘉昭『一生態学徒の能楽遍歴』p115(1975・蒼樹書房)
*4=黒田洋一郎、木村・黒田純子『発達障害の原因とメカニズム』第8章(2014河出書房新社)p248など
