2026年06月06日(土)

コラム・エッセイ

第22回 スペイン・インフルエンザとマスク(3)

大正期 スペイン・インフルエンザと山口県の人々 小林啓祐

 前回と前々回では、マスクという言葉が山口県でどのように浸透していったのかについてみていきました。残念ながら、実際どのくらいの人たちがマスクをしていたのかについては、今では知る由もありません。ただ、多くの人がするようになったと推測できます。当時の「ニューノーマル」となったマスク。その浸透も急速だったので、問題も起こってしまいます。それは現代と同じで、「売り切れ」です。

 スペイン・インフルエンザ「第二波」もピークとなる1920(大正9)年1月11日、「感冒予防法」が掲載されます(感冒はインフルエンザのことです)。その見出しをみると、インフルエンザ予防に必要なものとして「感作ワクチン」と「手製マスク」が挙げられていました。しかし、マスクについては、下関ではじめは25銭で売られていたものが、最近55銭になったとあります。仕入れてもすぐに品切れになってしまうようで、記事では手作りを推奨しています。現代とは少し過程が違いますが、品切れになった結果手作りするという流れは似ています。

 この時も品切れに対応するために知恵を絞っていたようです。記事にあげられている材料は「一尺五寸」の「針線」と白木綿で、これらを使えば市場に出回っているマスクの半額くらいで作ることができるとしています。この時期はまだ自作で衣服を作るのが当たり前ですから、この記事で紹介されている材料だけでなく、色々な素材を使ってマスクも各家庭で自作したことでしょう。各自が「ニューノーマル」に対して、悪戦苦闘していたのが目に浮かぶようです。

 今回取り上げた記事では、マスク以外にもワクチンが予防に重要だとしています。この時は、中川県知事の家族全員が受けたことが報じられています。100年前の出来事ではありますが、基本的な対応方法が変わらないという点は少し意外かもしれません。しかし、案外本質的な対応方法なのかもしれないと思わずにはいられません。今も昔も「ニューノーマル」に対応するのは大変だったということは変わらないでしょう。

1920年1月11日『防長新聞』=県立山口図書館所蔵

1920年1月11日『防長新聞』=県立山口図書館所蔵

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