コラム・エッセイ
第25回 スペイン・インフルエンザが我々に教えてくれること
大正期 スペイン・インフルエンザと山口県の人々 小林啓祐2021(令和3)年2月から続けてきたこのコラムも、今回で最終回となります。本コラムでは、日本を襲った100年前のパンデミック、スペイン・インフルエンザに向き合う人々の姿をいろんな側面から見ていただきました。さて、ここから我々は何を学ぶことができるのでしょうか。
最後に紹介する記事として、1919(大正8)年2月10日の『防長新聞』をとりあげてみようと思います。第一波がようやく落ち着き始めていたこの時期にあって、再び患者数が増えようとしていることを受けて「再起の感ある悪性感冒」という見出しで人々に油断しないようにという警鐘が鳴らされます。すでに多くの罹患者を出していましたので、スペイン・インフルエンザは未知のものではなくなったのですが、この間、デマが多く流されたことを受けて、なぜそういうことが起こるのかという原因について考察されています。そしてそれは、インフルエンザの原因が、専門家が必死になって研究しているにも関わらず、まだ発見できていないことにあるとしています。つまり、得体のしれないスペイン・インフルエンザという不安から、デマが多く流されてしまっているとしたのです。
どうでしょうか、100年前にされたこの考察、今でも十分に示唆に富むと思っていただけないでしょうか。令和に生きる我々は、100年前に比べて多くの洗練された科学技術に囲まれて生活しています。それによって、多くの情報を知っていると思っているからこそ、昔以上に未知のものに対して不安になっている側面もあるでしょう。しかし、未知のことに対して不安になることに時代は関係なさそうです。
今を生きる我々は、過去の経験を知識として得ることが出来ます。そして、それは同時に今を生きる我々の経験が、未来の人々の貴重な知識となることを意味します。おそらくこれからも我々は多くの未知のものに遭遇することでしょう。未来を生きる人たちに胸を張れるように、過去に学びながら、未来の人たちに何を残すか、ということを考えながら行動することが必要ではないでしょうか。
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1年もの長きにわたって拙文にお付き合いいただきましてありがとうございました。筆者の所属する徳山大学は本年4月から周南公立大学として生まれ変わります。
これからも、地域の皆さんに喜んでいただけるよう、地域に貢献できる研究を積み重ねていきたいと思います。まだ、どこかでお会い出来たら幸せます。 (おわり)
1919年2月10日『防長新聞』=県立山口図書館所蔵
