コラム・エッセイ
No.27 少し寂しい
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子誰に聞いた話だったか忘れたが、料理好きな女性は、掃除が苦手だと言う。反対に、掃除好きな女性は、料理が苦手らしい。これは一般的な見解で、掃除も料理も得意なひとも沢山いらっしゃるだろうが…。
私は掃除が苦手というより大嫌い。料理も上手ではないが、手料理で、ワイワイガヤガヤの食事会や飲み会を我が家でやるのが好きだが、只今、コロナ禍で自粛中だ。
もっぱら、読書に励んでいる。断捨離で思い切って本を捨てた。若い頃から、下手な詩を書いていたので、各地から自費出版の詩集が贈られてくる。それらを処分したら、本棚がすっきりした。
時々、娘は自分が読み終えた本を持ってくる。若者向き、と横目で睨んでいたが、退屈しのぎに読んでみたら案外、面白い。まだまだ、私も捨てたもんじゃない…かも。
先日、本棚の隅に眠っている『海と薔薇と猫と』(加藤剛著)を引っ張り出した。若い頃から、私は加藤剛の大ファンであった。と言っても、キャーキャーと奇声を発する…ミーハーではない…。
約30年前から、周南市民劇場の会員になり舞台に立つ加藤剛を観て、更に、熱はあがってしまった。
何故、前述の本が、我が本棚にあるのか覚えはないが、いそいそと本を開いた。改めて読み直してみて、若い頃に読んだ時の感激と少し違うのだ。いや、老いて読んだからか、作者の言葉がそくそくと胸内に落ちるのだ。
何故…だろう?
〝十年の貌”と題した中の「卒業」というエッセイの最終行。
〝美しき女(ひと)たちと、かりそめの役の上で相逢い、役の上で別れる。これも役者のひとつの「卒業」だろう。~中略~人はみな「卒業」を重ねながら人生を歩き、人生を眺め、人を愛し、優しく人生を卒業してゆくのだ。雪に記した足跡に降りつむ粉雪のように年月は音もたてない。そう思えば、我も人も何と愛おしい生きものか〟
筆が止まらず、最後まで、書き写してしまった。
加藤剛の読者を引き込む筆運び、独特の表現には、舌を巻くばかりだ。
使い慣れないスマホで調べたら、加藤剛は2018年6月18日没と出た。なんと、加藤剛の没月日は、私の誕生月日であった…。
私はフィクションでなく、自分の暮らしの中で、身の丈の話を書いてきた。この頃、あと、何年生きられるか、という思いが頭をよぎる。満足な1編も書けずに終わるかと思うと、少し寂しい。
