コラム・エッセイ
No.14 祝賀パレードを仰ぎ見ました
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子不要不急の外出は、なるべく控えるようにという通達を守っている。
4月10日(土)どうしても出かけたい用事が出来た。お誘いを受けたのは、お風呂の友であるS夫妻からだ。私は、後先(あとさき)を考えずに即答した。
「行きます。行きたいです。是非、連れて行って下さい」
S夫妻の迎えの車が来た。私は飛び乗った。
「おはようございます。嬉しいお誘いに感謝でーす」
この日は、防府航空自衛隊北基地の入隊式だ。その式典で展示飛行するのは、新田原基地のF15戦闘機で、操縦隊長は、S夫妻の子息である。
私を、そのセレモニーに誘って下さった。老い先の短い私にはこんなチャンスは2度とないだろう。
気の早やる両親、いや、私を迎えに来て早めに出発した。途中、時間調整で永源山公園に立ち寄った。園内の新緑の木々や花々を愛でながら、頂上の風車小屋をめざした。到着した時、3人は肩で息をしていた。
前は瀬戸内工業地帯と海、後は私が生まれ育った集落、何年振りかの来園だ。広場では杖のような棒で、ゴムボールを飛ばし合いしている男性たちが居た。聞けば、ゲートボールの玉にスティックが当たらなくなったので大きなボールに替えたそうだ。平均年齢90歳のプレイヤーに、しばし見とれた。
F15の展示飛行に間に合うよう防府へ向かう。基地周辺の道路添いや、田んぼのあぜ道には、カメラ片手の見物人が沢山集まっている。父親であるS氏は少し離れたコンビニの駐車場から見ると言われたが、母親のY子さんはひとり正門まで歩き、守衛さんに何か質問の様子だ。S氏はあわてて門前へと車を走らせた。
その様子を見ていた受付の若い隊員さんがかけつけて来た。
「この辺で見物しても良いのでしょうか」
Y子さんの質問に、思案顔をした隊員さん。おせっかい屋の私は割り込んで言った。
「この方たちは、飛行隊の隊長の両親です」
「えっ、そうですか。門の横の駐車場に車を止めてごらん下さい。よかったら、入隊式の立て看板をバックに写真をお撮りしましょうか」
親切な申し出に、両親はすまし顔で、いや緊張の面持ちで立たれた横へ、私はちゃっかり並んだ。ハイパチリ。
11時7分、海の方から轟音と共に、F15戦闘機が飛来した。1秒の狂いもなく、あっと言う間もなく消えた。轟音が追従する。私たちはその轟音にも手を振り続けた。それも間もなく消えたが、立ち続けていた。
