コラム・エッセイ
No,3 温泉仲間
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子新型コロナウイルス禍で、スポーツジムに通っていたのをやめた。30年近く通ったと思う。そのため、物置化していた我が家の風呂の出番だ。個人用風呂にしては大きいと思うが、それでも窮屈だ。3密・不要不急の外出禁止を忠実に守って、家に引きこもっている。
昨年末、故人となった祖母や夫と一緒に営んでいた小店を、嫁である私が閉じた。時代の流れに逆らえないのだ。通信販売化になりつつある昨今、無知無力の上、後期高齢者の私には、廃業の他に道はない。
只今、小店跡を“皆の遊び場”にするため改装中だ。これは私の永い間の念願だったのだ。
決まった時間に店を開け締めしていたので気が抜けた状態だ。
そんな私を、S夫妻が湯野温泉に招待して下さった。すでに4回もだ。しかも、朝湯だ。広い浴場の湯に、おもいっきり脂体をのばし浮かべる。左肩にしゃぽーん、シャポーン、右肩にぽしょーん、ポショーンと湯をかける。まことに至福の時間だ。
その温泉に、広島から、2時間半もかけて通って来られる夫妻がいる。仮に、広島夫妻とお呼びする。S夫妻と広島夫妻の入浴時間が一緒のようで、いつしか、温泉友達になられた…ようだ。
1週間前、S夫妻が温泉に行きましょう、と誘って下さった時の事だ。洗い場で洗髪していた私に、広島夫人が声をかけて下さった。
「乳ガンの手術で、お乳を切除しましたの」
にっこり笑いながら胸をみせて下さった。思いがけないことに、私は失礼をかえり見ず夫人の胸をみつめた。
「手術して○○年になります」
動揺した私は、手術年月日を聞きとれなかった。堂々とした夫人の態度に、言葉もなかった。
入浴後、一緒に食事に行くことになった。世間話をするうちに、お互いの歳の話になった。広島夫妻の年齢は夫人が私より3歳うえ、夫君は8歳もうえであった。元気はつらつで、とてもそんなお歳には見えない。夫妻は、かって長距離ドライバーで、今も現役ドライバーなのだ。75歳で運転免許証を返納した私にすれば、考えられないことだ。私が最後に買った新車には10数年乗ったが、走行距離は10万キロにも満たなかった。エヘヘ…。
湯野地区の病院で、コロナウイルス感染者がたくさん出たようだ。広島夫妻は
「次回から、三丘温泉に行きます。次から三丘でお会いしましょう」と、おっしゃった。
どんな環境下にあっても、自分たちの楽しみ方を見つけられる夫妻に拍手をおくりたい。
